News 2003年4月21日 01:04 PM 更新

ウェアラブルコンピューティング
ヒトもカラスも――次のステップへ進むウェアラブル技術(1/2)

人がコンピュータをまとう目新しさが注目されてきたウェアラブル技術だが、「物珍しさ」だけではなく「使いやすさ」や「自己演出」そして「人間以外とのインタフェース」など、さまざまな方面へ研究が進んできているようだ

 情報処理学会の第65回全国大会(2003年3月25−27日)で、特別トラック「ウェアラブルコンピューティング」が催された。基調講演を行ったのは、東京大学大学院の板生清教授(新領域創成科学研究科環境学専攻・工学博士)と、大阪市立大学の志水英二教授だ。

人間とカラスをインタフェース

 基調講演の最初のパートは、板生教授の「ネイチャーインターフェイスへ向かうウェアラブル技術」である。

 同氏は日本時計学会会長であり、精密工学会副会長、日本学術会議メカトロニクス専門委員会の委員長も務める重鎮である。最近は、特定非営利法人(NPO)「ウェアラブル環境情報ネット推進機構」(WIN)理事長としても知られている。

 板生教授の考えるウェアラブル技術は、人間という存在を通り越した広さを持っている。扱う対象は鳥(カラス)であり、環境であり、地球全体をも視野に入れたものだ。

 人間(人工物)と自然物との境界に出てくるインタフェースを板生教授は「ネイチャーインタフェース」と呼ぶ。

 例えば、カラスの持つ情報や環境の持つ情報を、これまでは扱いにくい、あるいは扱えないという理由からコンピュータサイエンスでは無視してきたわけだが、それらをきちんと情報化しビジュアルに統合することで、これまでは見えなかったモノが見えてくるのではないか……というわけである。ネイチャーインタフェースでは、イギリスの地球物理学者ジェームズ・ラヴロックのガイア説のような世界が、コンピュータによって構築される。


ネイチャーインタフェースは人工物と生物(自然物)とのあいだのインタフェースを意味する

 人間を対象としない通信の場合には、扱う情報は文字や画像に代表されるようなデジタル情報にはとどまらない。というか、人間でなければ文字を扱うのは困難であろう。

 ネイチャーインタフェースでは、位置や体温、周囲の温度といったセンサーで取得するアナログ情報の方が、重要な情報として位置付けられる。この場合、「CPUの主な役割はアナログ情報をデジタル情報に変換するA/D変換や、変換したデジタル情報の信号送信などが中心になる」と板生教授は言う。


板生教授の提唱するネイチャーインタフェースは、自然環境などを広くターゲットにする

 センサーが取得したアナログ情報は、一見するとノイズにしか見えない。そこで、それを集めて分析し、表示するインタフェースを作ることが重要になる。表示することで初めて全体像が見渡せるのだ。

 実際に、板生教授の研究室では、温度、湿度、照度、気圧、騒音などを測るセンサーとGPSとを統合させたウェアラブルサンプリングユニットを作り、情報を収集して地図上にマッピングすることで統合的な情報を得られる環境情報統合化システムなどを試作しているという。

 報告では、カラスにPHS付きの情報センサーを装着、ねぐらや移動経路を調査する実験や人間の各種情報を取得するバイタルケアネットワークシステムの研究・構築なども紹介された。


ネイチャーインタフェースでカラスのねぐらを解析した例

 こうした次世代のウェアラブルに向けての実践的な取り組みを踏まえて、板生教授は「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に代表されるような未成熟な技術を、むき出しの状態で市場に投入するのは、かえってHMDの可能性を狭めて誤解を受けるのではないか」とも警告し、さらなる技術発展を強く促す。

 確かに、現状ウェアラブルコンピューターや各種HMDの多くは、快適というのにはまだ程遠いのかもしれない。

使うとわかるウェアラブルの限界と可能性

 基調講演の次のパートは、「ウェアラブルコンピューティングの可能性」と題して大阪市立大学の志水英二教授によって行われた。

[美崎薫, ITmedia]

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