News 2003年5月2日 12:30 PM 更新

「dynabook SS S7の3D性能がTi4200並み」は本当なのか

「ミニノートPCに3D性能を期待するのがそもそも間違っている」というのが、ツウなユーザーの常識だった。しかし、dynabook SS S7に搭載された「Cyber XP4 m32 LP」のおかげで、3Dゲームが快適に動かないミニノートPCは時代遅れとなってしまったようだ

 「3DMark2001で測定したら、GeForce4 Ti4200並みのパフォーマンスを出している」

 これは、CentrinoノートPC特集で取材したdynabook SS S7開発者の発言。dynabook SS S7が搭載しているビデオチップはTrident Microsystems製Cyber XP4 m32 LP。dynabook SSシリーズは伝統的にTrident製のビデオチップを搭載している。「SSシリーズのきょう体サイズでは外付けビデオメモリになるビデオチップは実装不可能」というのがその理由だ。TradentのWebによると、これまでのCyberシリーズにも3Dアクセラレータ機能が盛り込まれているらしいが、ユーザーからすれば(失礼ながら)「無きに等しい」というのが大方の評価であった。

 そのTridentのビデオチップが「Ti4200並みのパフォーマンス」である。にわかに信じがたい、というのが取材で耳にしたときの感想。しかも東芝の情報では「コアクロック、メモリクロックともに200MHz」。一方のTi4200はコアクロック、メモリクロックともに250MHz(データレートで見るとメモリクロック500MHzに相当)である。微妙なところだ(ノートPC用のGeForce4 4200 Goならコアクロック200MHz、メモリクロック200MHzとXP4同等となるが、東芝ははっきりと「Ti4200相当」と述べている)。

 しかも、3D描画エンジンの開発は「ノウハウの蓄積」がそれなりに必要。NVIDIAを向こうにまわし、メモリ内蔵のワンチップ構成、薄型ノートPCに搭載可能で、駆動クロックやや低めという非常に厳しい条件で、Ti4200並みのパフォーマンスを発揮できるのだろうか。もし本当なら、実に画期的と言える。

 ようやく出荷が始まったdynabook SS S7。果たしてそのビデオチップパフォーマンスの真相はいかに。今回入手した評価機で早速ベンチマークを実行してみた。使ったベンチマークは3DMark2001 Second Editon Build330。比較用にモバイルPentium 4/1.8GHzとMOBILITY RADEON(ビデオメモリ容量16MB)を搭載したノートPCを用いた。なお、今回のテストはノートPCで実行しているので、実行条件を以下のように統一している。

解像度 1024×768ドット
カラー 32ビットカラー
アンチエイリアス 使用せず
T&L ハードウェアT&Lを使用
OS/ビデオドライバ 製品にインストールされているものを使用


Cyber XP4の動作クロックをPowerTripを使って測定。東芝の情報とは異なり、コアクロック約140MHz、メモリクロック約140MHzとなっている。XP4のビデオメモリはDDRなので、データ転送レートで見ると280MHz相当になる


3DMark2001 Second Editon Build330 3DMark Score


3DMark2001 Second Editon Build330 Game1-4

 dynabookのCPUがPentium M/900MHzであることを考慮しても、Cyber XP4のパフォーマンスはMOBILITY RADEONを圧倒しているといっていいだろう。現在流通している3Dゲームを快適にプレイしようとした場合、3DMarkは5000程度必要、というのが3Dゲーマーの指標とされている。5000にはちょっと及ばないものの、4977という成績は、1チップ構成の駆動クロック140MHzという条件を考えると、十分合格点をつけていい。なにより、dynabook SSのきょう体で3Dゲームが、それも快適にプレイできてしまうとは驚きである。

 ユーザーにしてみれば、これだけでも十分驚いてしまうのだが、一方で「本当にTi4200相当のパフォーマンス?」というのも気になるところ。ノートPCにはTi4200を搭載した製品がないので、dynabook SS S7に近い構成のデスクトップPCを組み立てて、それにTi4200を搭載して3DMark2001 SecondEditionを実行してみた。なお、デスクトップPCの構成としてCPUにCeleron/1GHzを用意している。また、比較データとして、CPUに同じくCeleron/1GHz、ビデオカードにGeForce4 MX440を搭載したシステムも用意した。


CyberXP4とTi4200、MX440のパフォーマンス比較

 Pentium MとCeleronのパフォーマンス比較が動作クロックで単純にできないことや、ビデオメモリがXP4で32Mバイト、Ti4200とMX440が64Mバイトであることを考慮しなければならないが、今回の比較で見てみると、Ti4200にはかなわないものの、MX440は完全に凌駕している。

 これまで、ノートPCで3Dゲームをプレイしたいなら、GeForce FX Go5600シリーズをはじめとするNVIDIA、または、MOBILITY RADEON 9000シリーズをはじめとするATI、このいずれかのベンダー製ビデオチップが必須とされてきた。しかし、これらのビデオチップは発熱やダイサイズの関係で、A4フルサイズノートにしか実装できず、かといってMOBIRITY RADEONでは「快適な動作」は厳しい。

 このような状況で、いままで「動くことには動く」ミニノートPCでの3Dゲームが、XP4のおかげで「快適に動く」レベルまで引き上げられたことになる。XP4がサポートする機能もDirect X 8.1にVertexShaderとPixcel Shaderに対応するなど、NVIDIAやATIの製品と同等(ただし、カバーするバージョンはそれぞれ1.1に1.2まで)となっている。

 今回のテストで、記者がこれまでTridentのビデオチップに抱いていた「無きに等しい3D性能」というイメージは完全に払拭された。それどころか、逆にミニノートPCで3Dゲームが快適に動作する唯一のビデオチップという実に重要な位置付けになってしまった。これからは「Tridentのビデオチップが載っている」というのが、ミニノートPCを選ぶときの重要なポイントになってくるだろう。

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関連リンク
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[長浜和也, ITmedia]

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