News 2003年5月6日 07:10 PM 更新

まもなく登場「バイオU PCG-U101」の基板を見る(2/2)


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 排気口の向きが決まるとファンの位置が確定する。ファンの位置が確定すると熱処理の効率を良くするために、熱を発生させる部品のレイアウトが決まってくる。「熱を出すCPU、ノースブリッジ、ビデオチップは集中して配置しています。また、発生する熱が無視できないメモリスロットはきょう体前面の左側に配置して、そこに設けたスリットから流れてくる空気で冷やしています。ほかのチップもスリットからファンの間に流れる、空気の通り道に配置しました」(山本氏)


上がU3の冷却機構。下がU101の冷却機構。U3ではアルミダイキャストのヒートシンクでCPUから熱を吸収し、長いヒートパイプでファンに誘導していた(なお、ヒートパイプの途中がくぼんでいるのは、その部分でビデオチップに接触させて熱を吸収するため)。U101では、CPU以外にもノースブリッジとビデオチップも冷却する必要があったため、アルミパネルで熱を拡散。CPUからはメッキした銅版で効率よく熱を吸収し、ヒートパイプでファンに誘導している。ちなみに、腐食などを考えると無垢の銅版よりメッキをしたほうが耐久性が上がり都合がいいらしい。メッキをしても熱吸収効率はとくに変化しないという

 U3では、CPUを集中して冷却するために、厚みのあるアルミダイキャストで熱を吸収し、長く伸ばしたヒートパイプでファンに誘導していた。U101では、カバーするチップが複数あるため、それらのチップを薄いアルミプレートで覆い、拡散して冷却する方法をとっている。ただし、CPUの熱はファンによる強制冷却を行わなければならない。

「軽く薄くするためにアルミダイキャストのヒートシンクは使えません。そのため、アルミプレートとCPUの間に銅をはさんで熱伝導率を高め、ヒートパイプでファンに熱を誘導しています」(山本氏)

 このとき、発熱するチップを集中して配置したおかげで、ヒートパイプの長さを短くできた。これも冷却効果の向上に貢献しているそうだ。また「発熱するチップを基板上面、背丈のあるコネクタやHDD、PCカードスロットを基板下面に配置したおかげで、U101で採用した熱に弱いリチウムポリマーバッテリーでも影響ありません」(山本氏)

 熱対策以外でも、ユーザビリティを向上させるコネクタの搭載位置も基板設計に大きな影響を与える。例えば、U101ではそれまで一箇所に集められていた2基のUSBのうちの一つを背面に移動している。「側面にあると使えなくなってしまうので、どうしても背面に欲しいんです」(山本氏)とはいうものの、USBの分割配置は信号配線などなかなか簡単にできるものではない。とくに背面になると「電源コネクタと干渉してしまいます。とくにU101ではコネクタピンが立っている部品を使うことになっていましたが、USBと干渉しない幅の狭い部品が既存品でありません。そのため新しくコネクタを作りました」(山本氏)。


USBを背面に1基実装するために、電源コネクタピンは幅の狭い部品を使う必要があった。しかし、奥行きを節約するために必要なピンが立ち上がっているタイプは幅の広いものしかなかった。そのため、新たに部品を製造している。金型のコストを考えると結構な出費になる

 新規に部品を作るのはコスト管理からすると避けたいところ。それでもソニーの開発陣は「使い勝手のよさを実現したかった」という思い入れを優先している。使い勝手への思い入れの典型的な例は、USB、i.LINKのコネクタを「ぶら下がり実装」にしたところだ。基板の裏側にコネクタを実装した経緯は先に述べたとおりだが、通常のコネクタをそのまま基板裏に実装すると、ケーブルを逆向きに差さなければならない。「そうなるとコネクタのイラストが見えなくなって使いにくくなる。そこで、逆向きに実装できるぶら下がりタイプのコネクタを探したら、これも既存の部品ではない。そこで新しく作りました」(山本氏)。


無線LANモジュールはMiniPCIのモジュールとして実装している。「コストや後々の変更などに柔軟に対応するにはMiniPCIモジュールという選択がベストだった」(安形氏)。ただし、MiniPCIにするとコネクタユニットが必要になるがどうしてもそのスペースが確保できない。そこで「メイン基板とモジュールにコネクタを取り付けて、ぐるっとフレキケーブルを取り回して何とか実装できた」(安形氏)というアクロバット的な方法も編み出している

 U101の基板開発は、ミニマシンによくある「必須チップを押し込める難解なパズル問題」を解くだけではなかった。ちょっと見ただけでは気が付かないような、使い勝手を向上させる細かい工夫も、基板の上に詰め込まれていた。U101のサイズに巨大な(モバイル用途としてはやっぱり巨大だろう)チップを実装したり、発熱の大きい(トータルで考えるとモバイル用途としてはやっぱり高めだろう)チップ群を冷却したりと、このあたりの技術は確かに目立ちやすいところである。しかし、「コネクタのイラストを見やすくするために、逆向き部品を新しく金型から起こす」作り手のやる気と、その開発コストを吸収できるソニーの体力というのが、実はバイオノートの底力じゃないだろうか。

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[長浜和也, ITmedia]

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