News:アンカーデスク | 2003年5月7日 07:28 PM 更新 |
2002年5月、Webサイト制作ツールを開発しているMacromedia社が、自社の顧客担当者5人を抜擢して個人のウェブログを作らせ、広報活動に当たらせたのがその一例だ。
2003年2月には、大手検索エンジンGoogleが「Blogger」の開発元Pyra Labs社を買収し、ウェブログを利用したより高度なWebのインデックス化が期待されている(関連記事)。
アカデミズムの世界でもウェブログを活用しようという動きが出ている。2003年3月、ハーバード大学は大学内ブログ「Weblogs At Harvard Law」の立ち上げのために、有名なウェブログ「Scripting News」の運営者でSOAP、XML-RPCといった数々のプロトコルの開発者でもあるDave Winer氏を特別研究員に招き入れた。
ウェブログ・コミュニティ全体の情報の流れをマクロに見渡すためのサービスもいくつか登場し、「ネット上で何が話題になっているか」を一目で把握することも可能になっている。
その代表的な2つのサイトが「Blogdex」と「Daypop」だ。これらはシステムこそ違え、ウェブログ・コミュニティで話題になったトピックをリンクされた順にランキングしているサイトである。
日本の個人サイトコミュニティの現在――個人ニュースサイトを中心に
日本では、1998年後半から1999年にかけて、ニュースや面白いWebページを独自の視点で集めて紹介するという、ウェブログに似たスタイルの個人サイト群が登場しはじめていた。これらは当初、企業ニュースサイトから記事をクリップすることが多かったことから、「個人ニュースサイト」と呼ばれ、この時期に1つのジャンルとして認識されるようになった。やがて企業が発信するニュースにとどまらない雑多な情報が扱われるようになり、日に10万−20万のアクセスを集める“大手サイト”もいくつか存在している。
多くの個人ニュースサイトが、トップページをヘッダ、サイドバー、メインコンテンツエリアの3つのエリアに分けるという、標準的なウェブログとほぼ同じインターフェースデザインを採用していたことは特筆すべき事柄かもしれない。
ブロードバンドの普及で日米両国の回線状況が似通ってきたこと、海外発のニュースサイトの洗練されたデザインに両者が影響を受けたこと、同種のサイト同士が互いを情報源として活用したためにコミュニティが発展し、相互に影響を与えあいながらより使いやすいインタフェースが模索されていったこと、といった共通の要素が、必然的に両者のスタイルを近づけたのだろう。
ウェブログがそうであったように、初期の個人ニュースサイトが扱う内容は技術系、もしくはゲーム・アニメなどのオタク関連のニュースが多かったが、このスタイルのサイトが注目を集めたことから2000年後半以降は社会・サブカルチャー・芸能・海外ニュースと広範囲の情報が扱う個人ニュースサイトが続々と誕生し、今に至っている。
また、個人の声を集約するシステムとして、大型掲示板サイト「2ちゃんねる」もまた、米国においてブログが果たしている役割のひとつを担っているといってもよいだろう。
一方、Web黎明期から存在していた日記サイトについては、専用の無料ツールやレンタルサービスが数多く生まれ、それぞれ独自のコミュニティを築いてきた。その中にはブログに近い機能を提供する「tDiary」などの高機能なツールもあり、これらを利用したブログ的な日記も少なからず登場している。しかし個人ニュースサイトとは異なるコミュニティとして、相互参照されることは少ない。
そしてこれこそは日本の個人サイト・コミュニティが海外のウェブログ・コミュニティと大きく異なる点だ。
片や、ツールの登場によって同形態のサイトが一気に広まったために、企業をも巻き込んで1つの大規模なコミュニティとして社会的に認知されているウェブログ。片や、歴史が古いために小さなコミュニティが、統一されることなく独立して育った日本の個人サイト。
この差異は、両者の社会的な影響力の違いとなって現れている。日本においては、初期のウェブログがプロのジャーナリストたちにそう見られていたように、個人サイトが取るに足らないアマチュアのお遊び以上のものと見なされることは少ない。
まだまだ数は少ないが、Movable TypeやBloggerといった海外製のウェブログツールを利用して運営されている日本語のウェブログも増えている。
こうした動きが活発化し、海外のウェブログ・コミュニティに融合していくのか、これまで同様独自の発展を続けていくのか、それはまだわからない。しかし米国におけるウェブログの成功を目の当たりにしたことで、個人Webパブリッシングに新たな可能性を見出した個人やITベンチャーの数は少なくないはずだ。
彼らが今後どのような試みをしていくか、日本のWeb文化の発展はそこにかかっている。小さな存在が流れを作り、大きな奔流となって世界を変えうるWebの世界はまだまだ喜ばしき“黎明期”なのかもしれない。
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