News | 2003年5月9日 04:14 AM 更新 |
WinHEC2003の2日目、Microsoft Windowsクライアント担当上席副社長のWill Poole氏が、Windowsのクライアント戦略について講演した。
同氏はハードウェア技術者に対して「コスト偏重主義ではなく、付加価値を優先した設計を行うべきだ」と話し、付加価値を優先した次世代PCを構築するため、MicrosoftはWindowsプラットフォームの改善に努めていると話した。同社はLonghornをリリースするまでの間、Tablet PCおよびMedia Center PCのアップデートを行うという。
そしてPoole氏は、例えばPCゲーマーの市場にもっと注目するべきだと話す。近年、PCゲーム市場は専用ゲーム機の能力向上などもあって押され気味。3Dグラフィックボードが売れるほどには、実際には3Dゲームをする人などいないと言われている。
しかしPoole氏が示したIDCのデータによると、Windows上でゲームを楽しむユーザーの49%が過去12カ月以内に新しいPCを購入し、24%は6カ月以内の買い換えたという。68%のユーザーは(チップセット内蔵型ではなく)独立型のグラフィックサブシステムを持っており、35%が512Mバイト以上のメモリ、61%が64Mバイト以上のビデオメモリ、50%がAthlonもしくはPentium 4以上のプロセッサを搭載する。
つまりPCゲーマーは、数多くのコンシューマーPCユーザーの中でも、特にパフォーマンスや最新技術に対して敏感で、より多くのマネーをPC市場に投入する、ハードウェアベンダーにとって特別なユーザーであるというわけだ。
一方、実際の市場を見るとコスト重視の設計・開発が進んでいるのは明らか。1998年にはわずか15%にしか過ぎなかった1000ドル以下のPCは、2002年には76%を占めるにまで至っている。もちろん市場が成熟する過程でコストダウンは必要なものだが、過度にコストを意識した市場になると、本来あるべき発展性が失われてしまう。
Poole氏は、もっとユーザー体験の向上を重視した設計・開発を行う必要があると訴える。要は新しい生産性をもたらすTablet PCや、高い付加価値でベンダーに利益をもたらしてくれるMedia Center PCなどの可能性を見逃してはならない、というわけだ。
ユーザーは面倒くさいこと、混乱すること、待つことが嫌いで、PCを使うことに関して深く考えたくはない。PCは常にオンの状態で最新の情報をキャッチアップし、いつでも作業が可能で、透過的にサービスや機能を利用でき、あらゆる場所、好みのデバイスで情報にアクセス可能にならなければならない。
Poole氏は、いつでも動作できる信頼性と自己回復能力、透過的で簡単な接続性とサービスの利用しやすさ、高度な電源管理やポータブルな情報管理、インテリジェントな接続性、ソフトウェアやデータの自動配布によるAlways On、Always Up-to-Dateなどといったものを、将来のPCに必要とされる要素として挙げた。
加えてうるさくて、重くて、熱すぎ、不快なPCを改善し、本格的なAVデバイスなみの品質や機能を備えなくてはならない。その中で64ビット化、PCI ExpressによるI/Oの強化なども必要だ。
Poole氏の挙げる改善すべき点の多さは、ここでは書ききれないほどだが、翻ってみれば、前へと進むだけの余地があるとも言える。冒頭で述べたゲーマーは、少々面倒な設定や問題があっても、あるいはうるさくて、熱くて暑くなるPCでも、ゲームを楽しむためならば許容してくれる可能性が高い。しかし、PCベンダーにとって良いお客さんであるPCゲーマーのような人々を増やしていくためには、マイナス面を削っていくことも必要だ。
Microsoftは現在、昨年リリースされたWindows XP Media Center Editionの改良版を準備中だ。MicrosoftはMedia Center PCが、店頭で人気のモデルになっているというが、実際にはまだまだAV機器との差が大きく、ネットワークソリューションも用意されていない。
基調講演では新しいMedia Center PCのデモも行われたが、基本的なユーザーインターフェイスは同じものの、フォームファクタや騒音レベルなどの規定がより厳しくなり、画面デザインも一新。より使いやすいものになっている。
詳細は別途お伝えするつもりだが、Media Center PC周辺の改善は非常に急速に進んでいる。筆者はこれまで、Media Center PCに対してかなり懐疑的だったが、今回のWinHECで紹介されている次バージョンならば、日本市場にもフィットするものに仕上げることができるかもしれない。
Windowsの最新ロードマップ
Poole氏が提示したWindowsのロードマップによると、来年にはWindows XP MediaCenter PC EditionのVersion 2が登場する見込み。その前、今年の中頃までには機能強化を図ったVersion 1.1も投入される。日本語版は9月にリリースされ、日本の複数のベンダーも製品化を進めているという。
2003年中頃までにはWindows XP Tablet PC Edition Version 2登場(ごくわずかな時間だが、基調講演でもデモされていた)。次世代WindowsのLonghornは来年初頭からβテストを開始し、2004年と2005年の間ぐらいに完成する。
実際にはリリース用コードが完成後、OEM向けのテスト期間や製品パッケージの生産を行う時間が必要となるため、Longhornが店頭に並ぶのはもっとも早いケースでも2005年春ごろになると推察される(個人的には現実的な線として2005年年末商戦向けのリリースになる可能性も高いと予測しているが)。
Longhornの流出を伝えた既報では、Longhornの開発が順調でリリース時期が早まるとの観測もあったが、筆者がWinHECで得た情報ではまだ全くの白紙。というのも、流出したのはM5と呼ばれる開発途上のバージョンで、まだβにも達しておらず、機能の多くは未実装のままだからだ。
Longhornに、対応ハードウェアとそのドライバを間に合わせるためには、今年、準備を進めなければならない。ギリギリのタイミングだ。しかし、エンドユーザーの手元に届く日はまだ遠い。MicrosoftはWhistlerからBlackcombへと移動する途中、Longhornに寄り道する予定だったのかもしれないが、その寄り道は予想外険しいものになりそうだ。しかしその景観はすばらしいものだという。Microsoftは、そのポイントまで素早くユーザーを運ばなければならない。
[本田雅一, ITmedia]
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