News:アンカーデスク | 2003年5月12日 00:59 AM 更新 |
先週末、各PC系ニュースメディアで一斉にMicrosoftが「HighMAT」を記録型DVDメディアにも拡大する、というニュースが流れた。しかしこのHighMATという技術ほど、抽象的で分かりにくいものはない。
まず検索性の向上という点では、デジタルコンテンツごとにメタデータやサムネイルイメージなどを持たせる。もちろんそれがコンテンツデータと一緒にあるだけでは、検索もなにもできないので、それらをまとめたり引っ張り出したりする仕掛けをメディア内に置く、ということだろう。
今年1月のCESでも、PanasonicブースでHighMAT関係の展示が行なわれていた。しかしどうも例え話ばかりで、それがどう便利なのか今ひとつピンと来なかったものだ。CD-Rに記録された写真がテレビで見られたり、MP3がCDラジカセで聞けますと言われても、そんなのもうできてるジャンという印象しか持てなかった。
もっとも当時、筆者の興味は、光ディスクメディアの互換より、ホームネットワークにおけるコンテンツ互換にあったので、説明されても「ああそうですかへいへい」と聞き流していたというのも事実だが。
しかし今回のWinHEC2003におけるMicrosoftの発表(5月9日の記事)を見ると、ようやく今までできなかったところまで踏み込めそうな感じだ。
違法コピーの根底に潜むもの
筆者がもっとも興味を持ったのは、Windows Media 9でエンコードされた映像を含むDVDソフトの開発が示唆されている点である。つまり高画質なMPEG-2データとともに、同じ映像のWM9データが同じメディア内に収録される。ユーザーはそのWM9のデータを合法的にリッピングでき、PCで利用できるという。
自分でも驚いたことに、偶然にもこのコンセプトは筆者が昨年7月にDVD関連メーカーが集まって行なわれた「第8回記録型DVD会議」の中で講演したときに、筆者自身が喋っている。当時まだHighMATは発表されておらず、規格はまだ水面下で動いていたはずだから、参加していた松下電器の人もさぞ驚いたことだろう。
もしかしたらHighMATの将来と重なる話かもしれないので、その内容をご紹介しよう。そもそもなんでそんなことを話したかというと、元々の本題は、市販DVDの違法コピー防止策の提案だったのである。
ホームシアターシステムの愛用者は別として、PCのDVDドライブ購入者のほとんどは、現状のDVDのコピープロテクトに対する不満はあるはずだ。
レンタルDVDがコピーできないのはある程度の理解は得られるだろう。そうやって80年代初頭に、日本の音楽産業が一度崩壊したからだ。しかし自分がお金を出して購入したDVDは、コピーなり別フォーマットへ変換して、他のもので見られてしかるべきだと思っているのではないだろうか。
われわれはDVDを買うときに、「円盤が銀色で綺麗だナ」という理由で買うわけではない。映像コンテンツ、すなわちそれに収録されている中身を買っているのである。
銀色の円盤を複製しちゃダメと言われれば、ああそうですかと納得もする。だが昨日買ったDVDのコンテンツを、移動中にケータイやポータブルTV、Palmほか、なんでもいい、そういったポータブルビューワーで見ることは、著作権法で認めるところの私的利用の範囲に属することじゃないのだろうか?
しかし現状は、映像コンテンツの読み出しは、「再生」でしかできないようになっている。
このようなコピープロテクトは、控えめに言えば「不便」だ。だがもっとストレートな言い方をすれば、「金払った客を泥棒扱い」しているのである。筆者の実家は酒屋で、小さい頃から商売人の基本を叩き込まれたが、こんな客扱いは、死んだばあちゃんも許さないだろう。
[小寺信良, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
前のページ | 1/2 | 次のページ