News:アンカーデスク | 2003年5月12日 02:16 AM 更新 |
コピープロテクトがかかったDVDからリッピングすることが違法であるにも関わらず、それを無視して行動させてしまう根底には、そういった客扱いへの不満や怒りみたいなものがあるのではないか、というのが筆者の分析である。
この怒りを収めるためには、どこかに正当化された空気穴が必要だ。そこで市販DVDソフトにMPEG4などの圧縮フォーマットでも収録し、PCユーザーはそれを自由に扱えるようにすればどうか、というのがその時の筆者の提案であった。
客を客扱いすること
ネットで流れちゃうのでそれにも制限を加えたいというのであれば、大量生産で製造されるデジタルデータに対して、いかにスマートに個人認証を行なっていくかがキーとなるだろう。 すなわち権利を持つ(金を出す)ことの優位性を明確にするわけだ。客には客らしい扱いをするのが、商売の基本である(と、ばあちゃんが言っていた)。
そうでなければ、マスターディスクからコピーされた一定期間で自動的に再生不能になるような仕掛けを導入してもいい。マスターを持っているから、必要ならまたそこからコピーすればいいのである。音楽とは違い、映像は四六時中同じもの見続けるわけではない。正規のユーザーも不自由さはあまり感じないはずだ。
このアイデアは、筆者のオリジナルとは言えない。元をたどれば、コピーコントロールCD(CCCD)のスタイルを、映像風にアレンジしたものだ。
CCCDでは、PCでの再生用にWMAのデータを別途用意している。これの問題は、WMAのビットレートがあまりにも低すぎて、鑑賞に耐えないクオリティしか持たないところである。必要じゃないものを提供しているから意味がないし、かえって怒りの矛先にしかならない。
しかし映像の場合、ポータブルビューワーで見るには、ドデカくて高画質なMPEG-2データは必要ない。むしろ画質を落としても、あるいは面積を縮小しても、ファイルサイズが小さいほうがいい。必要とするデータをあらかじめ提供してやることで、フラストレーションに対するガス抜きを行なうわけである。
考え方を変えてみよう
この低解像度データは、どんなにプロテクトをかけても、いずれネットに流れることになるだろう。
しかしこれが映像コンテンツホルダーに対してマイナス要因だという印象を与えては、話は進まない。お金を払っても高解像度の大画面で見たい、あるいは高音質で聴きたいというムーブメントをひき起こす仕掛けが必要だ。ネットの地下流通ルートに、プロモーションの役目を担ってもらうわけである。低解像度データに含まれるメタデータを参照すると、オリジナルのDVDなりがネットで簡単に買える仕組みがあっても面白いだろう。
われわれは、四六時中、人のものを盗み見ることばかり考えて暮らしている泥棒ではない。このアイデアがベストな方法かどうかはわからないが、いずれにしても地下流通のルートを面白くセールスの道具にする方法を考えたほうが得策というものだ。
MicrosoftがHighMATを使ってそこまでやるかは、まだわからない。当面は記録型DVDがターゲットらしいので、ごく近視的な見方をすれば、普通のPCなりMedia Center PCで録画したテレビ番組をWM9にしてDVD+R/RWにバリバリ追記。それがPanasonicのDVDプレーヤーで再生できる、といったシナリオだろうか。
確かにそれはそれでまあまあ面白いかとは思うが、そこまでなら産業構造を変えるほどのソリューションではない。
しかしAppleのSteve Jobsは音楽業界を説得し、スマートな方法でのネット販売をスタートさせた。Bill Gatesがそういうことをやってみたくなるという可能性は、ゼロではないと思うのだが。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
[小寺信良, ITmedia]
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