News 2003年5月19日 07:55 AM 更新

PS2ハードの限界? 開発者・山内一典氏に聞く“リアルさ極めたGT4”(1/2)

ゲームソフトとしては、E3最大の話題になったのがグランツーリスモの最新作「グランツーリスモ4(GT4)」のデモ版公開。開発者の山内一典氏にその詳細をうかがった

 ロサンゼルスコンベンションセンターで開催されているElectronic Entertainment Expo(E3)で、最新のデモ版が公開されたグランツーリスモの最新作「グランツーリスモ4(GT4)」。「単にデモ版を遊んでもらうだけではなく、細かな内容について紹介したい」というのが、その狙い。そこで開発元であるポリフォニー・デジタル(POLYPHONY Digital)の山内一典氏自身にその詳細についてうかがった。


GTシリーズを開発するポリフォニー・デジタルを率いる山内氏

 山内氏によると、GT4に収録予定の車種は約500。その数は過去最大だったPlayStation用のGT2と同等規模だ。ただし、PS2に最適化したグラフィックスのGT4では、1車種あたりにかかる制作の手間は10倍になるという。しかも、今回は歴史的に価値のある名車、旧車も収録されるという。

 GT4デモ版を見るとオープンホイール、オープントップの車も収録されており、ステアリング操舵に合わせたホイール角度の変化や、サスペンションアームの動きまでを計算、グラフィックスに反映する処理を行っているという。

 またデモ版に収録されたニューヨークダウンタウンやグランドキャニオンといった実在の町並み、地形をコースとして収録するほか、筑波サーキットやラグナセカなど、実際に存在するサーキットを走ることができる。従来版では実在のサーキットが収録されていなかったが、それには明確な理由があったそうだ。

 「実際に存在するサーキットで走れると、GTの中のタイムと実際のタイムを比較できてしまう。そのタイムに大きな差があると恥ずかしいから」と山内氏は話す。逆に言えば今回のGT4では、実車でのタイムとゲーム上でのタイムに違いが出ない自信があるということだ。


筑波サーキット走行のワンシーン

 その自信の裏には、GTシリーズではじめて自動車の挙動を計算する物理シミュレータエンジンのメジャーアップグレードがある。シミュレーションの精度を徹底的に向上させた結果、かつてないいほど実際のラップタイムに近づけることができたのだとか。

 たとえば筑波サーキットにおけるテストでは、ホンダS2000のベストラップ誤差は0.4秒、フォルクスワーゲンLupoの場合で1秒に収まる。実車がない段階でモデリングしたRX-8に関しても、RX-8の試乗会が開催されたラグナセカのラップタイムをあらかじめ計測しておいたところ、実際にプロドライバーが走ったタイムと1秒以内の差しか出なかったそうだ。

 山内氏はシミュレーション精度を上げることで、実際のスポーツドライビングの練習にもなると胸を張る。筑波サーキットで山内氏がプロレーサーとタイムトライアルしたとき、タイム差は0.03秒しかつかなかったそうだ。「子供たちがGT4で遊び、ドライビングのテクニックを磨いた上で、将来、トップドライバーになってくれれば」と山内氏は夢を語る。

 またゲームとしてみた場合も、コンピュータ操作の車が従来よりもずっと頭良くなっているとか。ゲームに慣れた人間なみの速さで走り(GT3では人間とAIのタイム差が2.5秒。GT4では1秒以内が目標)、人間らしい動きをしつつ、賢いAIを組み込んだ。

 Logitech(日本のロジクール)と共同開発した、新型のフォースフィードバックハンドルコントローラも、大きな魅力のひとつだ。


Logitechと共同開発した新型コントローラ

 新しいコントローラは「下手に使うと手首を痛めそうなほど」強いフォースを発生させることができるという。GT4ではその強さを車種や場面ごとの、操舵感の違いとしてゲームの中で利用している。

 つまり、細い一般向けタイヤは軽く、太いレーシングタイヤや、ステアリングギア比の高いレーシングカーでは重くなる。また実際の車と同じロックトゥーロック900度に設定され、実際の車を運転する間隔に近づけた。

 発表会後、山内氏に話をうかがったが、GT3の段階でグラフィックのクオリティに関しては目一杯のテクニックを盛り込んでいたようだ。今回、徹底した現地取材で「人間の方をチューニングし」(山内氏)、背景の自然な色や空気感などを実現したという。

[本田雅一, ITmedia]

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