News 2003年6月19日 10:59 PM 更新

薄型大画面TVは有機より“ムキ”?――iFire、2005年に34インチ無機ELディスプレイを商品化(2/2)


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 同社製品担当副社長のドン・カークナー氏はCBBについて「新技術では、青の蛍光体だけを使うのがポイント。残り2色の光は、青色を吸収して緑や赤に再発光する特殊な色変換材料を組み合わせることで生成するという方法で、フルカラーに必要な3原色の光を作り出している」と説明する。


従来のTriple Pattern Process(左)とCBB(右)の仕組みの違い。青色を吸収して緑や赤に再発光する特殊な色変換材料を使うことで、3原色の光を生成

 「蛍光体が青1色だけになったことで、ディスプレイ全体の構造が簡略化された。この方式では、赤と緑の蛍光体の製造プロセスが省略できる。タクトタイムが大幅に短縮され、設備コスト/生産コストもそれぞれ約15%削減。製造工程の簡略化で、歩留まりも向上する。さらに現在研究中の新しい色変換素材では、よりキレイな色を再現でき、グレースケールや白色もクリアに表現できる」(カークナー氏)


無機青色蛍光体の青色を吸収して緑に色変換する特殊な材料を塗布した実験用機材(右)。色変換材料のところが青から緑に変化している。左は赤に色変換する材料を塗ったパネル

 自発光の無機ELディスプレイは、厚さ15ミリ以内に収まる薄型ボディや広視野角・高速応答性など、FPDとしての性能は有機ELやPDPとよく似ている。さらにLCDやPDPの弱点である色再現性も「CRTにせまるクオリティが可能」(同社)で、単純な固体構造のため衝撃にも強く、動作温度範囲も広い。そのうえ生産コストを低く抑えられるので、最終製品の価格も「同サイズのCRT並み」(同社)という。35インチ前後で実売20万円以下ぐらいだろうか。


CBB方式で作られた17インチ無機ELディスプレイの画像。試作機のため、ドット抜けなどが目立つが、輝度の高さや広い視野角は自発光のELディスプレイならでは

 「有機ELが注目されているが、TFT駆動のアクティブマトリックスが必要で製造コストアップにつながる。また、実用化されているサイズもまだ3インチ以下と小さく、30インチ以上の大型化には克服しなければならない課題が多いと聞く。単純構造で高輝度を可能にする無機ELディスプレイはパッシブマトリックスで製造でき、大画面化も容易。薄型大画面TVには、有機ELよりも無機ELの方が向いている。われわれの最初の製品としては、34インチのWXGA(1280×768ピクセル)のHDTVタイプを狙っている」(カークナー氏)


ほぼ真横からでも視聴できる広視野角

 「成長が期待されるFPD市場だが、大型パネルを生産できる第6〜7世代の新工場を予定しているのは、ほとんどが韓国や台湾などのアジアメーカー。当社の試算によると、年間25万モジュール(34インチ換算)以上の大型FPDが生産できる設備を構築するためには、年間13億〜28億ドルが必要となる。だが、製造工程がシンプルなiFireの無機ELディスプレイなら、年間1億6000万ドルの投資で可能になる。われわれは、日本のTVメーカーとともに協業していくことを望んでいる低コストで生産できるこの技術を、ぜひ日本のメーカーに取り入れてもらいたい」(ジョンストン社長)

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[西坂真人, ITmedia]

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