News:アンカーデスク | 2003年6月27日 11:59 PM 更新 |
NPO国際レスキューシステム研究機構による「レスキューロボット・デモンストレーション」が6月24日に川崎で開催された。速報記事ではロボットたちを簡単に写真で紹介したのだけど、今日は少し詳しく見ていくことにしよう。
国際レスキューシステム研究機構は文部科学省の「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(大大特プロジェクト)」を受けてのものだ。これは次のようなものである。
大都市大震災軽減化特別プロジェクト
大大特プロジェクトは、平成14年度から18年度まで、毎年約5億円の予算をかけたプロジェクトだ。「最初の2〜3年は、これまで災害対応の問題に適応されてこなかった技術を試行してみることによって、可能な技術の種を洗い出すことに重点を置く。最後の2〜3年は、それらのうちで可能性の高いものについて、実用化を目指すとともに、それらを統合化してシステムとして機能させることに重点を置く」(大大特プロジェクト平成14年度成果報告書)のだそうだ。いまはまだ前半の“いろいろやってみる”というフェーズである。
このプロジェクトは次のような項目で構成されており、それぞれはさらに細かい項目に分かれている。
I.地震動(強い揺れ)の予測「大都市圏地殻構造調査研究」
大地震を発生させるメカニズムを解明して、高精度の地震予知を行う。
II.耐震性の向上「震動台活用による耐震性向上研究」
兵庫県三木市に建設中の実大三次元震動破壊実験装置(*1)を活用して、都市構造物の耐震性の飛躍的構造を図る。
III.被害者救助等の災害対応戦略の最適化「災害対応戦略研究」
ここは、細かい項目も記そう。
(1)震災総合シミュレーションシステムの開発
(2)大都市特性を反映する先端的な災害シミュレーション技術の開発
(3)巨大地震・津波による連担都市圏の総合的対応シミュレーションとその活用手法の確率
(4)レスキューロボット等次世代防災基盤技術の開発
IV.地震防災対策への反映
防災に対する取り組みを促進させる政策、災害情報(の伝達、広報)に関する研究、そして復旧・復興に関する研究。
レスキューロボットの研究は、このような大きなプロジェクトの中の一部分ということになるわけだ。
がれきの中を進む
レスキューロボットになにより求められるのは、がれきの中にいる被災者を発見し、その位置を知らせることだ。実際に助け出すことは求めない。それは人間が得意な仕事だ。どこに被災者がいて、どこに被災者がいないかが分かれば、がれきを崩して助け出すことができる(「いないか」が分からないとかえって被害を増やすことになりかねない)。
また、被災者をはげますということも大事。外部から音声で「もうすぐ助けに行きます」って伝えられるだけで、極限状態にある人がどれだけ救われるか。また、その励ましに対しての応答の様子を調べることで、被災者の状況も分かる。
さて、実際にどうやってがれきの中を進むのかが問題だ。車輪ではとても進めない。クローラ(いわゆるキャタピラのこと(*2))でも、その高さの障害物は越えられない。もっと新しいものを考えなくてはいけない。
・ヘビ型
細いところをすり抜けていくと言ったらやはりヘビである。本物のヘビは身体のうねりで波を作ることで前に進んでいくのだけど、レスキューロボットにはそこまでエミュレートしたものはないようだ(*3)。基本的にはクローラのついたユニットが複数つながった列車のようなスタイルになる。
ただし、連結部分は上下左右回転の3自由度を持ったものになる。このようにすれば、鎌首を持ち上げて前進することで高い障害物も乗り越えられる。また、落下して横倒しになったとしても、身体をひねることで体勢を立て直せる。
[こばやしゆたか, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
前のページ | 1/4 | 次のページ