News 2003年7月3日 00:20 AM 更新

N+I 2003 TOKYOの展示会場で「こんなもん見つけました」

ネクタイとスーツでビシッと極めたビジネスマンがメインターゲットのN+I。当然、展示ブースも主流はエンタープライズ向けの製品だ。と思っていたら、少し毛色が変わった製品も案外展示されていた。ここでは、そんな「ちょっと気になる」を集めて紹介しよう。

 「NETWORLD+INTEROP 2003 TOKYO」は、7月2日から基調講演と会場展示が始まり、いよいよ本格的にスタートした。各基調講演の内容やワークショップの詳細、ならびに最新ネットワークソリューションに関する展示内容は、こちらの特集を参照していただくとして、ここでは、一般コンシューマーでも興味を持てそうな、ちょっと変わった製品を紹介していこう。

 エンタープライズ系のシステムを展示するブースが多い中で、コンシューマー系の展示が目立ったのが松下電器産業。立体視テレビやeBook専用端末の“動態”展示、そして赤外線を使ったバーチャルキーボードの体験デモが行われていた。

 この中で、最も印象的だったのがバーチャルキーボード。キーボード本体は赤外線センサーが組み込まれたタバコ箱大のユニットで。このユニットから映し出されたキーボードの模様をタイプすることで、PCに入力が認識される(赤外線を使ったバーチャルキーボードといえば米Canestaのものが有名だが、これは松下の子会社であるピンチェンジが独自に開発したものだ)。


松下電器産業のバーチャルキーボード。Tablet PCやPDAの本体にこのユニットを組み込めば、喫茶店や新幹線のテーブルがそのままキーボードになってしまうという。実際に叩いた感触は「小学校のとき使った音楽の教科書の裏表紙に印刷されていた紙鍵盤で、ピアノの練習をしているような感じ」だった

 実際に入力を認識するのは、ユニットに組み込まれた赤外線センサー。キーボードが映し出されたパネル面の1〜2ミリ上空を監視しており、その「領空に侵入した」物体があった場合、入力がなされたと認識する。

 使いやすい入力装置を携帯やPDAなどの大きさに制限があるデバイスにどうやって持たせるかは、長い間の課題だったが、キーボードがこうして“仮想的なもの”になってしまえば、そうした難題も一気に解決する可能性がある。簡単に言えば、バーチャルキーボードが映し出せるものであれば、何でも「キーボード」になってしまうからだ。

 バーチャルキーボードは、物理的なサイズはもちろん、基板やキー接点、配線などの制約を受けることない。設計にあたっては、入力と収納のしやすさだけを考慮すれば、それ以外の設計の自由度は高い(ただ、センサーが監視しているのは、投影したキーボード上空の1〜2ミリという狭い範囲なので、表面が平らでないと、入力がきちんと認識されないという制約はある)。

 デモで映し出されていたのは通常のキーボードだったが、入力エリアを自由にレイアウトして、銀行のATMや駅の切符発券機といった、専用端末での利用も予定されている。松下電器産業では、バーチャルキーボードを今年中に発売する計画。価格は未定だが、製造コストを考えると1万円台後半になる見込みだという。もっとも、会場では1万円を切って欲しい、という声が多かったようだ。


同じ松下電器産業のブースで展示されていたeBook用専用端末は今回初登場の試作品。現時点で重さが約550グラム程度、単3乾電池2本で5000回の画面表示が可能。一度に見開き2ページ分が書き換えられるので1万ページに相当する。秋からはサンプルを使った評価テストを開始。より軽く、より速い画面描画を目指してチューニングが施される予定になっている


表示された画面は少年漫画週刊誌並みのクオリティ。このままでもそれほど違和感なく読めるが、コントラストの向上や発色などの改良を加える予定になっている


松下電器産業のブースの一角が黒山の人だかりに。そこで展示されていたのは偏光グラスで立体視できるテレビのデモ。立体視テレビ自体はそう目新しいものではないが、流れていたのが、ある意味いま最もホットな話題である「阪神・巨人戦」。バックネットに飛んでくるファールチップに思わずのけぞったり、画面の遠くに見えるセンターにグランドの広さを感じてしまうあたり、ついつい「立体視テレビとっても欲しいぞ」と思ってしまうほどの臨場感。昔のように街頭で野球中継を流せば、ひょっとすると大ブレークするかも


立体視テレビ、というか、阪神巨人戦に見入る怪しい集団

 インテルのブースでは、先日発表されたばかりのMadisonことItanium 2のデモンストレーションが行われていた。

 といってもここで展示されていたのはただのMadisonサーバマシンではない。HPC業界で知らない人はいないという清水正人氏(エッチ・アイ・ティーの代表取締役社長)自ら組み上げた「HPC-IA642/T4」のパフォーマンスデモが行われていた。システムはItanium 2/1.4GHzの4Wayマシンを2台接続し、超大容量データの転送処理でパフォーマンスを披露している。


Itanium 2/1.4GHzの4wayマシン「HPC-IA642/T4」よるパフォーマンスデモ。清水氏の会社「エッチ・アイ・ティー」は、研究機関に科学技術計算用のHPCをカスタムで組み上げて納入するHPCベンダーだ。HPC-IA642の傍らには、可動型ストレージユニット「ARG-NAS MV」がさりげなく展示されていた。膨大なデータを扱う処理になると、ネットワークではデータが転送できず昔ながらの「スニーカーネットワーク」に頼らざるを得ない。このようなとき、耐衝撃性に優れたダンパーを装着し、厚いアルミ板で覆われたARG-NAS MVをストレージユニットとして使い、研究機関の間をピストン輸送するそうだ


HPC-IA642が本日たたき出した「約8.4Gバイトのデータファイルのftp転送記録」は16秒。これは520Mバイト/秒に相当するパフォーマンス。さて、明日の記録はいかに

 昨年のN+Iは無線LANが主流だったが、今年はVoIPとセキュリティ関連の製品展示がいたるところで行われていた。意外だったのがセキュリティ関連。これまでは「不正アクセス」「ウィルス感染防止」といったソフトウェア的セキュリティが主流だったが、何かと物騒なご時世を反映してか、不審人物の侵入やシステムの物理的破壊、盗難を防ぐ「物理的セキュリティ」に関連した展示が目に付いた。


サーバシステムを覆うケージと入退室を管理するソフトウェアを組み合わせたアクセスコントロールシステム「C・CURE800」(高千穂交易)。このように頑丈な“おり”でシステムを直接守る「セキュリティ」もこれから重要になってくるようだ


サーバラックもN+Iでは重要な展示ジャンルだが、今回最も印象的だったのが日本フォームサービスが展示したこの製品。専用のサーバルームがない施設でもマシンの安定した冷却が行えるようにクーラーユニットを内蔵したという、いたってまじめなコンセプト。ただ、記憶に残るのはやっぱりこのネーミング。ちなみにクーラーユニットを内蔵しない「冷やっ庫」も一緒に展示されている

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[長浜和也, ITmedia]

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