News | 2003年7月28日 10:55 PM 更新 |
トミーは7月28日、電子バイオリン「evio」(エヴィオ)の発売記念イベントを開催。evioの仕組みや販売の狙い、今後の事業展開について語られたほか、evioイメージキャラクターのバイオリニスト「高嶋ちさ子」さんや、人気お笑いコンビ「いつもここから」が登場した。
今年4月15日に発表されたevioは、弓を動かすだけで演奏できる独自のシステムを採用し、技術がなくても直感的に弾くことができる。7000円という手ごろな価格も魅力だ。
弓が弦に当たる部分に赤外線方式の光学センサーを搭載し、弓側にはセンサーで読み取るためのバーコードのようなスリットを印刷。弓を動かしてスリットがセンサーを通過すると音が出る仕組みで、スリットの通過スピードと動かした距離で、音量や音の長さを調節できる。また、ネック部分には音を振るわせる(ビブラート)演奏効果を楽しめる「ビブラートキー」も装備した。
「弓を刻むように引くとスタッカートが表現でき、ビブラートキーは音を伸ばす部分でより感情豊かな演奏が行える。弦の抵抗がないため、まるで空気を弾いているような不思議な操作感が楽しめる」(同社)
電子楽器の特徴を生かした多彩な演奏パターンを搭載。独奏を楽しむ「ソロ」モードに加え、伴奏をバックに主旋律を演奏する「オーケストラ」モード、どれだけガイドに沿った演奏ができたかを競う「コンクール」モード、演奏方法を習うことができる「レッスン」モード、evioがお手本を演奏する「デモ」モードなどがある。
イベント会場では、高嶋さんが小学生7人組の史上最年少ユニット「ちゃい夢」をコーラスに従えて「大きな古時計」をevioで披露。いくら高嶋さんが弾いたからといってシンセサイザーっぽいevioの音が変わるわけではないが、それでも終盤まではさすがプロという演奏を聴かせてくれた。
だが最後の「今はもう動かないぃ〜」と音を伸ばすところで、途中まで気持ちのよいビブラートを効かせていた高嶋さんの弓が一瞬戻ってしまい、次の音にいってしまったから大変。あわてた高嶋さんは、本物のバイオリン奏法がつい出てしまったのか、何度も弓を動かして軌道修正を試みるも、evioから奏でる音はどんどん先に行くばかり。とうとう、サビの部分はメチャクチャになってしまった。
イベント会場では「アルゴリズムたいそう/こうしん」などがヒット中の人気お笑いコンビ「いつもここから」も、evio演奏にチャレンジした。コント中にクラシックの名曲「カノン」を流すほど大の音楽好きで、コンビ結成の由来もバンド仲間から発展したという2人。evioもバイオリン自体も初挑戦ながら、コント中で使うカノンを選曲して、見事な演奏を披露した。
また、evioを盛り込んだ新ネタの「悲しい時」も披露した。
evioの課題は“重さ”
本格的な電子楽器としては、ヤマハが1997年4月にサイレントバイオリン「SV-100」(6万9000円)を発表。現在はその後継モデルとなる「SV-120」(6万9000円)とステージモデル「SV-200」(11万円)の2機種がある。サイレンとギターのボディには実際に弦が張ってあり、エレキギターのようにピックアップが弦の振動を拾って、それを電気信号に変換するという仕組みで、より本物に近い演奏ができるのが特徴だ。
これに対して弦のないevioは、本物のバイオリンとは音質も奏法もかなり違う。だが7000円という価格を考えると、バイオリンの楽しさを体験するオモチャとしては、かなりの機能を盛り込んでいると言っていいだろう。
プロのバイオリニストである高嶋さんも「とにかく『この値段で本当に儲けがあるんですか?』と言いたくなるほど、よくできている。持ち方など演奏姿勢も遊び感覚で身につき、センサー部の溝で弓が固定されるので、正しい弓の位置を覚えられるというメリットもある。確かにバイオリンとは音は違うが、誰でも正しい音階で弾けるので、絶対音感を養うのには最適」と太鼓判を押す。
だがやはり、本格的なバイオリンの練習に使うには、少々辛い部分も多い。その代表例が“重さ”だ。
本物のバイオリンの重さは、500グラム以下。evioの重量は発表資料には明記されていないが、同社にたずねたところ乾電池(単3形×4本)込みで約950グラムだという。ヤマハが大人向けに出しているサイレントバイオリンが約595〜660グラムなので、それよりも重いのだ。バイオリニストの中にはサイレントバイオリンでさえ「あんなに重くては普通の構えができない」という声もある。また、ヤマハのそれが登場するずっと以前から、本物のバイオリンの表板や裏板を切り抜いて共鳴胴をなくすことで無音化した軽量タイプが練習などで使われてきた経緯もある。
高嶋さんも「evioの重さがちょっと気になる。それでいて、サイズは本物よりも小さい。弓も本物の2倍ぐらいの重量だが、これは弓さばきの練習になっていいかも」とevioの欠点を述べながらも、「バイオリンは高くて難しいというイメージだったが、これなら誰でも気軽にバイオリンの演奏を楽しめる。大人の宴会芸にもいいかも。(自分の)ライブでネタに使いたい」と、かなり気に入った様子だった。
evioは本体メモリーに6曲分の演奏データが内蔵されており、曲データが入ったevioメディアを本体の専用スロットに挿入することで、さまざまなジャンルの音楽を演奏することができる。evioメディアは本体発売と同時に8タイトルが用意され、8月中にさらに2タイトルをリリース。10月以降は、毎月2タイトルずつラインアップに追加されていき、クラシックの名曲から邦楽やアニメソング、ドラマのテーマ曲など、多彩なジャンルが用意される。
“プラレール”やトミカに匹敵する息の長い商品に
昔も今も、男の子にとって“トミー”という企業は特別な存在だ。幼い頃、トミカやプラレールが宝物だった読者も多いことだろう。最近ではポケモンのキャラクター商品が大ヒット。2000年には東証一部上場も果たした。だがここ数年はポケモン人気にも陰りが見え始め、同社の決算も赤字が続いている。
「ここ数年間は、苦しい時期を過ごしてきた。その大きな原因が、魅力ある製品を世に出せなかったこと。以前は(ポケモンなど)キャラクターに恵まれ、出せば売れる状態で1200点以上の製品を出してきた。しかし、どれも短命で終わった。一方で、男の子が憧れている電車をモチーフにした“プラレール”は、40年間のロングセラーで、やはり子供の憧れの的である車をモチーフにした“トミカ”も、30年以上販売している。長く売れる商材は、子供たちが憧れるもの。今回の新製品は、女の子が憧れるバイオリンをモチーフにし、その憧憬を強めるためにバイオリニストの高嶋さんをイメージキャラクターにした。バイオリンというテーマは、子供だけでなく大人も楽しめると思っている」(同社トイ事業部長の柳澤茂樹氏)
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