News:アンカーデスク 2003年7月29日 09:38 AM 更新

「コピーワンスコンテンツ」がもたらす弊害(2/2)


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 単純に考えれば、現在のHDD内蔵のDVDレコーダーのように、録画したコピーワンスコンテンツを“移動させる”ことで、メディアに記録すると同時に録画したコンテンツを“強制削除”するという方法がもっとも妥当だろう。

 しかし、これは、メーカーとしてはかなり実装しずらい方法といえる。専用の機器よりもオープンな「PC」という環境では、ソフトを改変することによって、オリジナルをHDDに残したままメディアにコピーするといったことが比較的容易に行われてしまう可能性が高いからだ。

 もちろん、HDD内蔵のDVDレコーダーであっても、同様の危険性があることは否定はできない。だが、開発者ならいざ知らず、専用のソフトを使っているHDD内蔵DVDレコーダーで、PCと同じことをするのははるかに困難なことだ。当面、そう問題視されることはないだろう。

 その点でPCは大きく違う。となると、現在の著作権に関する潮流から見て、PCではコピーワンスコンテンツの録画に対する制限は、かなり厳しいものになる可能性が高い。少なくとも、OSレベルでより高度なコンテンツ保護を行えるようにならない限りは。

 実際、NECよりBSデジタル放送をPCに録画できる製品が発売されているが、この製品では、録画した番組は、メディアへのバックアップが可能だが、そのメディア自体から番組を再生することはできない。しかも、再生は、録画したPCでのみ可能という制限もある。これは、PC上でコピーワンスコンテンツをどう保護するかということに関する、現状での一つの回答といえそうだ。

秋にも、CPRM対応のDVD-Rメディアが登場?

 もう一つ注目すべき動きは、DVDレコーダー(HDD内蔵含む)で、DVD-Rメディアに対してDVD-Video Recording Format(以下DVD-VR)による録画を行える製品が増加する可能性が出てきたことだ。これは同時に、CPRM対応のDVD-Rメディアが登場する可能性が出てきたということも意味している。

 現在のDVDレコーダーは、DVD-Rメディアはビデオフォーマット、DVD-RWメディアではビデオフォーマットとDVD-VR、DVD-RAMではDVD-VRを使用した録画を行うことが一般的だ。しかし、規格上は、DVD-R/RW/RAMのメディアでビデオフォーマットとDVD-VRを適用でき、DVD-Rメディアに対してDVD-VRで記録を行うときは、「VAT(Virtual Allocation Table)」という仕組みを使って記録することになっている。

 ちなみに、DVD-RWメディアでは、スペアリングテーブルとスペアリングパーティションというソフトウェアディフェクトマネジメントを使って記録している。

 では、なぜ、今までDVD-Rに対してDVD-VRで記録するメーカーがほとんどなかったのか――これはいうまでもなく、その必要性が低かったからだ。現状では、地上波のアナログ放送がDVDレコーダーのメインコンテンツである。これは現状では事実上“コピーフリー”だった。それをメディアに保存しておくのであれば、市販のDVDプレーヤーでの再生互換性が高いビデオモードで――というのはごく普通の流れだろう。

 もちろん、現状でもコピーワンスコンテンツは、存在している。だがそれはごく少数だ。であれば、そうしたものは、CPRMに対応したDVD-RWやDVD-RAMなどのメディアにDVD-VRで保存しておけばよい、となる。

 しかし、コピーワンスコンテンツが増加してくると、これまでのようには行かなくなるだろう。その理由は簡単。DVD-Rなどのライトワンスメディアの方が、1枚あたりの単価はDVD-RWやDVD-RAMなどなどより常に安価になるからだ。つまり、コスト面から見て、「ライトワンスメディアにコピーワンスコンテンツを録画できること」が求められるようになるのだ。

、しかも、コピーワンスコンテンツは、基本的に1度メディアに記録したら、以降の複製を作成することはできない。どうせ1度しか記録できないのであれば、より安価なメディアに保存したいという要望が出てきても不思議ではない。事実、DVDレコーダーを設計しているメーカーでも、それを見越して「そろそろ潮時では」といった話がちらほらと聞こえるようになってきている。

 注意したいのは、「CPRM対応のDVD-Rメディア」が登場したからといって、ビデオモードでコピーワンスコンテンツが記録できるというわけではない、ということだ。理由は、DVD-Videoと互換の形式であるビデオモードにCPRMを適用すると、多くのDVDプレーヤーで再生できなくなってしまうからだ。これは、CPRMでコンテンツプロテクトされたDVD-Videoを再生できるDVDプレーヤーがあれば、解決される問題だ。しかし、現状ではそのように設計された製品はおそらくほとんどないだろうし、そういった機器を新たに製造するよりも、DVD-VRで記録されたDVD-Rメディアを再生するほうが簡単だろう。

苦境にたたされるDVD+RWアライアンス?

 また、これと同じ理由で、現在のところCPRMのようなコンテンツプロテクション技術が採用されていないDVD+RW/R規格は、少なくとも民生用のレコーダーの世界では苦しい立場に追い込まれてしまう。

 もっとも分かりやすい解決策は、CPRMに対応することだが、これはDVD+RWアライアンスにとっては苦渋の決断になるかもしれない。理由は、現在DVD+RWレコーダーで採用されているDVD+RW Video Recording Format(DVD+VR)が、DVD-Video互換形式であるため、ビデオモードでCPRMを使って記録したときと同様、再生できないDVDプレーヤーが多くなってしまい、せっかく策定したDVD+VRの優位性が失われてしまいかねないからだ。

 では、違うコンテンツプロテクションを――とやっても結果は同じだ。意地の悪い言い方をすれば、「だったら、最初からDVD-VRで記録すればよいではないか」――ということになりかねないのである。

 現状のDVD+RW/Rレコーダーは、コピーワンスコンテンツであることを検出すると録画がストップするように設計することで、何とか対応しているという状況。DVD+RWアライアンスは、この問題をどのように解決するのか。コピーワンスコンテンツの増加は、こんなところでも、新たな対応を迫っている。



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[赤波子, ITmedia]

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