News 2003年9月17日 04:23 PM 更新

P4 Extreme、仮想PC機能、自動サスペンド――AMDを意識したIntelのデスクトップ戦略(1/2)

米国カリフォルニア州サンノゼで開幕した「IDF Fall 2003」。Intelは基調講演において、近く発表されるAMDのAthlon 64を意識してか、さまざまなアプローチでIntel CPUのデスクトッププラットフォームが優位であることをアピールした。

 米国カリフォルニア州サンノゼで始まったIntelの開発者向け会議「Intel Developer Forum Fall 2003」。Intelは近く発表されるライバル製品、AMDのAthlon 64を意識してか、あるところでは力業、別の部分ではアイデア勝負、さまざまなアプローチでIntel CPUのデスクトッププラットフォームが優位であることをアピールした。

AMDへの闘志が垣間見えるデスクトップ版Gallatin

 まず既報の通り、デスクトッププラットフォーム担当副社長のルイス・バーンズ氏が、基調講演の中でPentium 4ファミリーの新製品を紹介した。といっても、90ナノメートルプロセスで製造される次世代Pentium 4「Prescott」ではない。当初、今回のIDFではPrescottがデスクトップ製品の主役になると見られていたが、「予定通り、年末までに投入する予定」と話すばかりで、詳細に関しては一切触れなかった。

 その代わりに紹介されたのが、Pentium 4 with Hyper-Threading Technology Extreme Editionである。最後にExtreme Editionが付いた理由は、2Mバイトの3次キャッシュメモリが搭載されたことによる。


Pentium4 with Hyper-Threading Technology Extreme Editionの新ロゴを発表するバーンズ氏

 ちなみに製造プロセスは現行のPentium 4シリーズと同じ130ナノメートルプロセスで、動作クロックも同じく3.2GHz、チップセットもi865、i875に対応であり、キャッシュメモリ増量以外の大きな変更点は見られない。表面的なスペックを見る限り、現在Xeon MPとして販売されているGallatin(ギャラティン)と同一に見える。

 デスクトッププラットフォーム担当ジェネラルマネージャのウィリアム・スー氏に、これはGallatinと同じものなのか? と質問してみたところ、「いや別物だ。まずパッケージが異なりピン数も違う。また2次キャッシュメモリにECC機能がない」と答えたが、内部のコアは同一と考えられる。


デスクトッププラットフォームに関して質問に応えて頂いたウィリアム・スー氏

 実はGallatinコアをデスクトップ向けに投入するのではないか? という噂は、今年2月のIDF前にもあった。当初のAthlon 64のリリース予定が今年春だったため、Intelはこれに対抗するため、3次キャッシュメモリの多いGallatinをデスクトップ向けに投入することでパフォーマンスアップするというシナリオである。

 AMDの計画が後ろにスリップしたこともあり、IDF Spring 2003の段階ではひとまず投入が見送られたものの、ウィリアム・スー氏はデスクトップ版Gallatinの存在をにおわせる反応を示していた。

 ここに来てデスクトップ版Gallatinの投入が決定した背景には、Athlon 64への牽制の意味があると考えられるが、Prescottの出荷タイミングが(年内の公約は守るものの)多少後ろに伸びたのでは? との憶測も呼んでいる。

 「デスクトップ版Gallatinを搭載したシステムの登場は今後1〜2カ月の間」とバーンズ氏が発言していることを考えると、年末商戦向け製品にPrescottが大量採用されているかどうか怪しい。Intelはこれまで、Prescottが年末商戦におけるデスクトップPCの目玉になると話してきた。

 またIntel社長のポール・オッテリーニ氏は、90ナノメートルプロセスを採用する製品について「90ナノメートルプロセスの製品はできる限り早く出荷しようと考えているが、最初に出荷されるのはBanias後継のDothanになる。90ナノメートルプロセス製品の初期の生産はDothanを優先させ、製造ラインのフィラー(穴埋め役?)としてPrescottの生産を流すという形になる」と話した。このコメントからも、Prescottの出荷時期、あるいは出荷ボリュームに関して、あまり積極的な姿勢は見えてこない。

 デスクトップ版Gallatinは、その空白を穴埋めするために作られた特別版であると考えられる。バーンズ氏は「このプロセッサは、あくまでもハイエンドユーザーとゲーマーを対象にしたもの」と話しており、AMDがAthlon 64で狙っている顧客層ともピタリと一致する。

仮想PC機能と自動サスペンド機能の提供も約束

 Intelは、自らのデスクトッププラットフォームに顧客を繋ぎ止める、あるいは買い換えを促す手段として、新しい試みにもチャレンジしている。その一つは、今回のIDF技術トラックで詳細が公開されているLaGrande Technology(別途、詳細をレポート予定)だが、今回、新しい二つの要素が加えられている。

 一つはVanderpool Technologyと言われるもの。Vanderpoolというキーワードは先のIDF Spring 2003でも登場していたが、今回、これが仮想PCをハードウェアで実現する機能であることが明らかになった。

 例えば、オッテリーニ氏のデモでは、リビングのPC向けに書斎のデスクトップPCからビデオストリームを配信中、書斎のPCでゲームを遊ぶなどして再起動が必要になった時、再起動をかけてもビデオストリームの配信が中断しない様子が描かれた。これは家庭内ネットワークのサーバとして動作中のPC環境と、書斎の上で使う通常のWindowsとが別々の仮想PCとして動作しているためだ。


オッテリーニ氏とバーンズ氏が並んで、Vanderpool Technologyをデモ。メディアストリームを配信しながら、ホストマシンの環境をリブートさせても配信がストップしないというデモを行った

 Virtual PCやVMwareなどのソフトウェアによるPCの仮想化と同様のことを、ハードウェアレベルで実現するわけだ。物理的には1台のPCだが、仮想的には複数PCにパーティショニングされる。今回はデスクトップPCの機能として紹介されていたが、サーバ向け機能としても有効性の高い機能と言えるだろう。

[本田雅一, ITmedia]

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