News 2003年9月22日 09:28 PM 更新

Blu-ray DiscとAOD――本格普及の鍵は“ROM”が握る(1/2)

「ポストDVDの本格普及にはROMが重要。鍵を握るのはハリウッド」。Blu-ray DiscやAODなどの次世代光ディスクの本格普及は、2006年以降になるかもしれない……。

 WPC EXPO2003の2日目(18日)に開かれたテクノロジーセッション「ここまできたBlu-ray Disc&AOD」に登場した講演者たちは、皆一様に「普及には、(再生専用の)ROMが重要」と口をそろえた。

 その一方でハリウッドは、コンテンツのHD(High Definition)化に対してコピープロテクション問題を挙げ、移行に慎重な姿勢を崩さない。今年4月に世界初のBlu-ray Discレコーダーがソニーから発売。ポストDVDをにらんだ次世代光ディスクの商品化はすでに動きだしている。しかし、本格普及への道のりは、まだ長そうだ。

普及には"ROM=コンテンツ"が重要

 「通常、(PC用の)記録型ドライブが普及するには再生専用機が普及してから4年ほどかかっている。これからいくと、ポストDVD市場(Blu-ray DiscやAOD)の本格展開は、かなり先になる」


「Blu-ray DiscとAOD。次世代光ディスクの行方」と題した講演を行ったふじわらロスチャイルドリミテッドの藤原卓利氏

 過去の歴史を振り返りながら次世代光ディスク市場の立ち上がりの見通しをこう予想したのは、市場調査会社、ふじわらロスチャイルドリミテッドの藤原卓利氏だ。

 実際、CDは1993年から94年ぐらいにCD-ROMドライブの市場が立ち上がり、記録型のCD-R/RWドライブ市場が立ち上がったのは、その約4年後――1997年から1998年ぐらいのことだ。DVDでもこの傾向は同じ。1998年から1999年ぐらいからDVD-ROMドライブの出荷が伸びだし、記録型DVDドライブは、約4年後の2002年後半ぐらいから急速に市場が立ち上がってきている。CDやDVDの世代では、「ROMが市場形成の先導役を果たしてきた」(藤原氏)

 しかし、その一方で、重要なポイントと目されるROMの展開は、今しばらく時間がかかりそうだ。というのも、すでに製品化が始まったBlu-ray Discも、現在規格化が終了しているのは書き換え型の規格(通称BD-RE)のみ。再生専用のROM規格(通称BD-ROM)の策定は、現在急ピッチで行っているところである。

 AOD(規格名称は、HD-DVDになる予定)については、規格の策定すら完了していない。光ディスクの歴史の中で、記録型からスタートするのは、Blu-ray DiscやAODの世代が初めてなのである。

 その状況について、Blu-ray Disc陣営の松下電器産業の田中伸一氏(メディア制御システム開発センター所長)は、「(機器の普及には)ROMが重要だと思っている。」と藤原氏と共通の認識を示し、BD-ROM規格については、「年内にもROM(の規格)は決まるだろう。BD-Rもほぼ同じ時期に決まる予定だ」と言う。また、その普及については、VHSのときと同じようになるのではないかとの認識を示す。

 「VHSも初めはスローだった。7年目に(映画などの)パッケージが出て(世界的に)大きく伸びた。DVDは3年、VHSは7年。良いコンテンツがあってこそ急激に市場が伸びる。Blu-rayでは、レコーダーで再生環境が普及し、その上でROMパッケージが登場することになるだろう」(田中氏)


「ここまできたBlu-ray Disc」と題した講演を行った松下電器産業・メディア制御システム開発センター所長 田中伸一氏

 AODでもROMが重要という認識は、共通だ。AODでも、ROMとリライタブルを同時に規格化する予定となっており、その戦略の中心は、やはりROMにある。メディアの製造のしやすさやアプリケーションのフォーマットなど、現行DVDから使いまわせるように配慮しているのはまさにこのためといっても間違いではないだろう。

[北川達也, ITmedia]

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