News 2003年9月24日 10:15 AM 更新

伏兵「Athlon 64 FX-51」の実力を検証する

Opteronの皮をかぶったAthlon 64とでも言うべきFXシリーズ。いきなり現れたハイエンドAthlon 64 FX-51の実力と64ビットWindows XPと32ビットアプリの互換性を検証する。

 別記事ですでに紹介したように、Athlon 64にはデュアルチャネルメモリアクセスに対応したAthlon 64 FXシリーズと、シングルチャンネルのみのAthlon 64が存在する。

 前者はOpteronと同じmPGA 940を使用し、後者はピンの数が少ないmPGA 754という仕様になっている。このため、お互いにマザーボードの互換性はない。

 元々、デュアルチャンネル版のAthlon 64 FXは、シングルチャンネル版Athlon 64より遅れて2004年にデビューする予定だった。しかし計画は前倒しされ、今回のAthlon 64の発表と同時にAthlon 64 FXもデビューすることになった。

 ここでテストを行っているのは、Athlon 64 FX-51である。内部動作クロックは2.2GHz、メモリはDDR 400 Registardに対応している。デフォルトのCPUコア電圧は1.55ボルトと、Athlon XPやPentium 4とほとんど違わない。

 本来、Athlon 64のCPUコアは「CrawHammer」であるべきなのだが、WCPUIDやCPU-Zなどの情報表示ツールを動かしてみると、Athlon 64 FXのコアはOpteronと同様のSledgeHammerと表示される。SledgeHammerベースであるが、仕様上、Athlon 64 FXはシングルCPUのみをサポートしており、デュアル動作はサポートしてない。


CPU-Zで表示したAthlon 64 FXデータ

Athlon 64 FX-51ベンチマーク

 Athlon 64 FXのアーキテクチャーは、Opteronと共通のものだが、これまで発売となっているOpteronよりも高クロックで動作するモデルであることから、パフォーマンスには大きな期待ができる。発売済みのOpteronのトップモデルはOpteron 244/144の1.8GHzで、今回デビューしたAthlon 64 FX-51の動作クロックは2.2GHzとなっており、単純計算でも2割程度のパフォーマンスアップを期待できる。

 今回のAthlon 64 FX-51のテスト環境は以下のような構成である。

 比較用にはAthlon XP 3200+、Pentium 4/3GHz、同3.2GHzのスコアを用意した。ただし、Athlon 64 FX-51の環境ではメモリが1Gバイト、比較用のテスト環境はメモリ512Mバイトで計測したものなので、その分、割り引いて比較する必要がある。


SYSmark2002


3DMark 2001 SecondEdition Build330


TMPEGenc(31秒959フレームのDVフォーマットの動画を、7MbpsのMPEG-2へエンコード。画像サイズは720×480ドット)


FINALFANTASY XI for Windows公式ベンチマーク

 SYSmark2002では、SYSmark2002 RatingでAthlon XP 3200+よりも高いスコアとなっており、動作クロックが同じであることを考えると効率はかなり良い。Internet Content Creationのスコアが特に高く出ていることから、実数演算系の処理が得意と考えられる。Pentium 4との比較では、Pentium 4/3GHzとほぼ同じ性能であるが、Pentium 4/3.2GHzにはまだ残念ながら届いていない。

 3DMark2001 SecondEdition Build330の結果も、SYSmark2002とほぼ同様のことが言える。Athlon XP 3200+やPentium 4/3GHzが凌駕しているものの、Pentium 4/3.2GHzにはわずかにおよばない。

 TMPGEncを使ったエンコードベンチでは、Athlon XP 3200+とほぼ同等のスコアとなっている。TMPGEncでのエンコードに関しては何よりも動作クロックが大きく影響するため、動作クロックが同じAthlon XP 3200+とほぼ同じ結果というのは妥当だろう。

 最後に、FINALFANTASY XI 公式ベンチであるが、ようやくAthlon 64 FXの面目約如といったところである。元々Pentium 4よりもAthlon XPが良いスコアを出すベンチなのだが、Athlon XP 3200+のスコアも更新し、ダントツの速さを見せてくれている。

Athlon 64用の64ビット版WindowsXPを試してみる

 今回、評価キットとともに、64ビット版のWindows XPが用意されていた。「for Opteron and Athlon 64-based System」となっており、β版ではあるものの対応がほぼ完了しているようだ。発売の予定は、今年の末から来年の早い時期と考えられる。

 今回の評価機材に新規インストールを行ったが、スムーズに作業が進むなど、かなり完成度の高いβ版となっていた。ドライバ類は64ビット専用でないと、デバイスが正常に認識されないことが多いが、Windowsのインストール自体は32ビット版と同じ感覚であっけなくできてしまう。

 64ビット環境で心配なのは、32ビット対応アプリの互換性だ。今回、ベンチマークソフトをインストールして実行させたところ、SYSMark2002はインストールが正常に行われず、3DMark2001 SEとFF XIベンチはテストが始まったところでリセット。TMPGEncは、CODECがインストールできないため、正常に測定できなかった。

 一般的なアプリケーションでもテストを行ってみた。インストールするアプリケーションが日本語版であるため、日本語フォントをあらかじめインストールした状態でテストを行っている。Microsoft Office 2000をインストールしてみたところ、ExcelもWordも普通に使う分には問題なかった。一太郎13でも試してみたが、こちらもインストール、標準的な動作とも問題なかった。

 ゲームでもいくつか試してみたが、マイクロソフト製のダンジョン・シージでは、インストールは正常に終わるものの、ゲームをスタートさせると3Dグラフィックスが表示される前にリセットがかかってしまった。ほかに「アークス・ファタリス4」「Stronghold Crusader」「ジュラシックパークを作ろう」もインストールしてみたが、こちらは問題なく動作してくれた。

Athlon 64本来のパフォーマンスは未知数

 繰り返しになるが、今回のテストは、64ビットCPUであるAthlon 64 FXを、32ビットOSで使用した時のパフォーマンスを測定したものである。インテルの64ビットCPU Itanium系の32ビットモードはかなり遅く、とても使い物になるものではないと言われている。

 その意味では、Athlon 64 FX-51のパフォーマンスは、32ビットネイティブなCPUとほぼ同等かそれ以上であり、32ビットOSで使用しても問題はないだろう。

 しかし、Athlon 64が本領を発揮するのは、64ビットOSで64ビットアプリケーションを使用したとき。だが、64ビット版WindowsXPでは、ちゃんと動作するベンチマークソフトがなく、本当のパフォーマンスを知ることができないのは残念至極である。

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[寺崎基生, ITmedia]

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