News:アンカーデスク 2003年9月29日 12:18 PM 更新

ソニー辻野CP、コクーン戦略を大いに語る(1/2)

9月8日にこの連載で「コクーン、敗れたり?」を掲載したところ、コクーン部門の責任者であるホームストレージカンパニーの辻野晃一郎プレジデントから「戦略について直接ご説明したい」との申し出を受けた。さぞや怒られるのかとビクビクもので行った筆者だが……。
顔

 9月8日に掲載した筆者の記事「コクーン、敗れたり?」は、書いた本人も驚くほどさまざまな場所で波紋を及ぼした。これが普段ならばそれほど騒がれることもなかっただろうが、奇しくもソニーの新レコーダ「スゴ録」の発表日とぶつかったものだから、まさにソニーとしては出鼻をくじかれたような気持ちであったろう。

 そんな折も折、ZDNet編集長の元にソニーの広報センターから1通のメールが届いた。「コクーンについて、ホームストレージカンパニープレジデントから直接ご説明申し上げたい」とのこと。もちろん件の記事に対してのリアクションであるから、「おまえ、ええかげんせーよ」的なニュアンスは含まれているものと考えるべきである。

 そんなわけで先週の24日、品川にあるソニー本社のロビーに、筆者とZDNet編集長、そしてZDNetでも光メディア系のライターとして知られる北川達也氏の3人が集まった。この件に関しては北川クンは全然関係ないのだが、どうせ怒られるなら人数が多い方が矛先が分散されるだろうという判断である。もっとも北川クンの記事をよく読めば、筆者よりヤバいことを書いていることも少なくないので、いざとなったらそれをバラして、置いて逃げることもこっそり考えている。

 コクーンを始め、DVD、HDDレコーダー、VHSなど映像記録家電とでも言おうか、これらを広くまとめているのが、ホームストレージカンパニープレジデントの辻野晃一郎氏だ。名刺交換させていただくときに、「私が“コクーン敗れたり”の責任者です」と笑いながらご挨拶されたときには、ヤラレタ、と思った筆者である。

 今回は、この4月からこのホームストレージカンパニーのプレジデントに就任されたという辻野氏のお話を伺いながら、「コクーン」とは一体何なのかを考えてみたい。

コクーン誕生秘話

 「まず歴史的なところから簡単にお話ししますとね」と、辻野氏はソファに深く腰掛けながら、気さくな調子で始められた。

 ソニーは2年半前に、大きな機構改革を行なっている。そのときに辻野氏は、VAIOデスクトップから、当時新設された「ネットワークターミナルソリューションカンパニー」へ移動、セットトップボックスやハードディスクを使った製品の指揮を執ることになる。ただ残念ながら、このカンパニーにはDVD関係の部署が含まれていなかったと言う。

 「昔VAIOをやってた関係もあって、IT系の早い動きに対してテレビ系の動きの遅さを感じました。さらにその当時は、ディスプレイデバイスとしてトリニトロンからフラットパネルに移ると言われていて、みんなそれ以上のことを考える余裕がなかったことに非常に危機感を覚えましてね。受像機としてのテレビ産業は終わりで、次世代のテレビを新定義していかないと、と考えたわけです」

 「そこで“次世代の家電って何?”といったときに、インテリジェンスを持った、あるいは感性を持ったエージェントみたいな定義だろうと。そういう考えがコクーンにつながっていくわけです」

 それを具体化していくために、ベースとなったモノがある。

 「当時(2年半前)一緒に引き取ったプロジェクトの中に、『ClipOn』と米国でやっている『TiVo』があったんです。ただ、どっちもこのままじゃダメだと思いましたね」(辻野氏)

 この二つの製品に関しては筆者がまとめよう。2000年に発売されたClipOnは、ソニー初のHDDレコーダーである。この製品、実はVAIO部隊でMPEGをやっていたエンジニアの一部が派生して作ったデバイスで、辻野氏にしてみれば、GigaPocketの分家みたいな印象であると言う。

 一方米国のTiVoとは、HDDレコーダーをベースにした番組録画・視聴システムで、設定したテレビ番組を番組表から自動的に探してきて録画するという、一種のコンセプトビジネスである。このコンセプトに乗っかる各メーカーがハードウェアを製造し、販売する。ソニーも米国でTiVo用HDDレコーダーをいくつか発売している。

 「ClipOnは、AV家電の延長線上にあるものでしたが、新しいビジネスの提案にはなってない。いずれにしても限界が来るだろうと思っていました。一方のTiVoは、中身は大したことないんですが、作っている人たちがAV屋じゃなくIT系の人たちでした。これにはビジネスモデルとしての提案もあったわけです。AV系とIT系、この両者の強みを組み合わせられないか、ということでできたのが、チャンネルサーバ(CSV-S55)です」

 その経緯を伺うと、ClipOnとチャンネルサーバの間には、形は似ていても大きな違いがある。キーワードを登録しておけば勝手に録画するという「おまかせ・まる録」機能は、TiVo的な発想だと言えるだろう。

 この時点でチャンネルサーバは、レコーダーではないと考えなければならなかった。事実チャンネルサーバ以降、カタログなどから「録画機」という表記が消えているのである。言ってみれば、「バッファ付きTVチューナー」というべきものであり、次世代のテレビの提案というところからすれば、これはテレビモニタの拡張機だと言える。

 だがDVDレコーダーでさえ先行きが見えない段階で、そのコンセプトはあまりにも性急すぎた。

[小寺信良, ITmedia]

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