News:アンカーデスク 2003年10月6日 06:17 PM 更新

モバイルからAVまで、基幹技術開発に賭ける三洋電機(1/2)

三洋電機からこのところ矢継ぎ早に新技術・新製品が発表されている。その中には一見地味だが、まさにこれからのモバイルAVの方向性を左右するものが含まれていた。
顔

 三洋電機と言えば、白物家電メーカーという印象が強い。1947年創業の同社第1号製品は、自転車発電ランプであった。だが“SANYO”の名を世間に知らしめたのは、1953年に発売した「角型噴流式電気洗濯機」である。以来われわれがよく知っているのは、いわゆる「三種の神器」の普及に努めたメーカーという姿である。

 そのSANYOから先週、先々週と、新技術がドトウのように発表された。音楽系にしろ映像系にしろ、AV関連製品ではあまり目立った製品がない同社だが、実はそれらの製品を支える基本チップの開発・製造能力は凄まじいものがある。先月発表になった数々の新技術は、上半期の締めとしてその成果を示すという目的もあるだろうが、まさにこれからのモバイルAVの方向性を左右するものが含まれていた。

 まず身近なところから、9月30日発表の「業界最速の超急速30分充電器」のニュースから見ていこう。単3形ニッケル水素電池4本を約30分で充電するという充電器だ。また電池のほうも、7月に業界最容量を誇る公称容量2300mAh(typ.)の「HR-3UB」を発売している。


超急速30分充電器

 充電池の容量は技術革新によって年々増加の一途をたどってはいるが、物理的限界もあって近年は以前のように頻繁に容量の記録更新は難しくなってきている。だがSANYOは昨年8月にも、この前のモデル「HR-3UA」で当時の業界最容量2100mAh(typ.)の記録を打ち立てたばかり。名実ともに充電池のトップブランドである。

 同社の充電池開発の歴史は古い。ニッケルカドミウム蓄電池「カドニカ」を開発したのが1961年(生産開始は64年)、今から42年前である。筆者もそうだが、多くの読者はまだ生まれていなかったことだろう。乾電池をリサイクルする概念は、このとき始まったのである。

 現在ケータイやモバイル機などに使われる充電池は、形状の自由度からリチウムイオンに移っているが、それぞれの機器に対して専用充電器が必要だったり、本体充電しかできなかったりする縛りがある。一次電池のリプレースとして、また多目的用途として、ニッケル水素電池の大容量化は望ましい。

光り物とエコロジー

 次のニュースは、「環境対応型ディスクを商品化 マイルドディスク」である。


トウモロコシからできたマイルドディスク

 個人的な話で恐縮だが、実は先週、筆者宅は音楽CDの置き場に困って、ついに中身を市販のビニール製スリーブに入れ替え、プラスチック製の外枠ケースを大量に廃棄した。溜まりに溜まったCD-RやDVD-Rのケースと合わせると、その数ざっと300個。ゴミ袋2袋分である。

 たまたま筆者の住む地域の焼却施設はこれらが処理できるが、焼却による大気汚染物質の排出のことを考えると、むろんいい気持ちはしない。じゃあ土に埋めればいいかというと、これが自然分解するわけでもないので、半永久的に地下に埋もれることになる。いつかは掘り出されて邪魔者になるのである。貝塚じゃあるまいし、例え1万年後に掘り出されたとしても、ここに光り物好きがいたことが分かるだけで、大した文化的価値もないだろう。

 環境対応型ディスクは、従来使われていたポリカーボネート樹脂に変わって、トウモロコシを原料とするポリ乳酸から作ったプラスチックでCDメディアを作る、というものである。ポリ乳酸から作ったプラスチックは、土中に埋めれば微生物の働きで生分解するし、焼却しても無害である。同時にケースや包装フィルムのほうも天然素材で作るという。こういうディスクなら、大量廃棄してもココロが痛まない。

 トウモロコシ1本から10枚のディスクができるとあるが、何もSANYOがこれから総力をあげてトウモロコシを栽培するわけではない。トウモロコシからポリ乳酸を製造するのは米国企業で、そのトウモロコシも余剰生産分を充てるわけである。

 植物由来のプラスチックが作れるこのポリ乳酸という物質は、製造業の多い日本国内で盛んに研究されている。この動きは経済産業省の指導によるもので、企業としてはいかに多くの部材に天然素材が応用できるかが、今後の収益に大きく関わってくるからだ。いずれ近い将来、これらポリ乳酸製のプラスチップは、現在の石油資源由来のプラスチックに取って代わることだろう。

意外に勝負はこれから? のWMA

 音楽関係では、「WMAデコーダLSI LC78685V開発」の記事にも注目したい。わずか8.0×5.6ミリのチップでWMAをデコードする。特徴的なのは、これが既存のシステムにくっつける、いわゆるアドオンタイプのチップであることだ。これによってプレーヤーメーカーは、同じ基板でWMA対応あり・なしモデルを作って、ラインナップを増やすことができる。

 WMAは、その対応プレーヤー数から見れば、MP3の普及率には及ばない。しかし先月、ジュークボックスソフトでおなじみのMusicmatchが、音楽のダウンロード販売を行なうと発表したことにより、状況は変わるかもしれない。このサービスで提供されるフォーマットがWMAなのである。

[小寺信良, ITmedia]

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