News:アンカーデスク 2003年10月6日 06:30 PM 更新

モバイルからAVまで、基幹技術開発に賭ける三洋電機(2/2)


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 このサービスの影響は、ポータブルプレーヤーの領域にとどまらないと筆者は見ている。というのも、Windowsベースの音楽配信が成功すれば、WMAの音楽ファイルはポータブルプレーヤーやPCのHDDに取っておくだけでは済まない。当然、CD-Rなどのリムーバブルメディアにも書き出すことだろう。

 Microsoftと松下電器産業が提唱しているHighMATに乗っかる乗っからないは別として、今後はポータブルCDプレーヤーやミニコンポ、ヘタすればテレビやAVアンプでもWMAの再生機能が求められていくことになるかもしれない。

 実装モノではもう一つ、「5.2GHz帯デジタルAV無線伝送用モジュールを開発」も興味深い。HDTV伝送では、既に昨年ビクターが光無線による映像伝送システムを開発している。だがこちらは光のビームを受信機に正確に当てなければならないので、設置場所はある程度固定と考えなければならない。また、間に人が横切ったりしないよう、設置場所は天井などになるだろう。

 一方無線ならば、設置場所を選ばない点でメリットがある。SANYOのモジュールでは、最大スループット40Mbpsの伝送レートを持ち、HDTVデータをも伝送可能としている。

 液晶テレビの分野では、無線を使った映像伝送を行なう製品がいくつかあるが、IEEE802.11bベースだったので、当然ながらSDTV止まりであった。しかもSDであっても、実質的なスループットが4Mbps程度しかない状況では、画質的にそれほど良くない。

 しかし転送レートがこれだけ上がれば、HDTVだけでなく、SDでも十分な画質が得られるだろう。また液晶テレビだけでなく、セットトップボックスとディスプレイ装置、あるいはセットトップボックスとプロジェクタといった結線も無線になっていけば、ずいぶんすっきりするだろう。

ビデオを変える新技術

 今まではどちらかというと表には出ず、裏方に徹した感のあるSANYOだが、先週かなり目を引くデバイスが発表された。

 「SDデジタルムービー DMX-C1」である。今までSANYOのデジカメは、ムービーに強いことで知られてきた。しかしスタイルとしては、コンパクトカメラの域にとどまっていた。だがDMX-C1ではこれを一転して、ビデオカメラとしてのスタイルを重視した作りになっている。


DMX-C1

 SDカードに撮影するビデオカメラは、既に松下電器から「D-snap SV-AV100」が発表され、発売も間近に迫っている(関連記事)。だがDMX-C1最大の特徴は、ビデオと写真をモード切り替えなしで撮り分けることができるというところだろう。

 ビデオカメラに静止画機能が盛り込まれてずいぶん経つが、モード切り替えなしで撮影できるという機能は、多くのユーザーの悲願であった。さらにムービー撮影中にも静止画が撮れるという。

 テープメディアではないから、というところが大きいのかもしれないが、CCDの処理などが一体どうなっているのか、技術的な興味は尽きない。また音声コーデックに、ビデオカメラでは世界で初めてAACを採用したのも珍しい。

 デジカメを構成するチップ類には、SANYO製のものが多い。一時は「デジカメの中身の70%はSANYOが作っている」とまで言われたほどである。ちなみに「デジカメ」という用語が、実は三洋電機の登録商標であるところからも、早くから同社がこの分野に着目していたことが伺える。

 ただSANYOとしてもヒット商品は欲しいだろうが、他のブランディングが得意なAV機器メーカーやカメラメーカーと張り合ってまで勝負をかけるつもりがあるのかどうか、フタを開けてみるまでは分からない。DMX-C1にさまざまな新技術を投入したことは、ある種デモンストレーション的な意味合いも含まれていることだろう。チップや技術ライセンスで稼ぐといった方向が、同社の得意とするところだからだ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



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[小寺信良, ITmedia]

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