News 2003年10月27日 09:21 PM 更新

Auto-ID実用化に向け、規格標準化組織が発足

1〜2年後の運用開始を目指して、Auto-ID Centerは全世界規模でコード体系の標準化を進める「EPC Global」に進化する。運営母体はバーコードの標準化と普及を成功させたUCCだ。

 RFIDチップを利用した商品管理システムとして、全世界規模で規格の標準化と導入に向けた普及活動が進められているAuto-ID。

 そのAuto-ID策定団体によるボードミーティングがアジア地域では初めて、10月28日から東京で開催される。そのミーティングの先立って、Auto-ID Centerが記者会見を行い、EPCシステムの実用化と導入に向けた新体制の説明を行った。

 記者会見には、日本のAuto-ID Center拠点所長を務める、慶応義塾大学村井純教授や、米Auto-ID Centerエクゼクティブ・ディレクターのケビン・アシュトン氏、アシュトン氏と一緒にAuto-ID Centerの協同設立者でMIT教授のサンジェイ・サルマ氏といったAuto-ID幹部が勢ぞろいした。


慶応義塾大学教授の村井純氏


Auto-ID Center エクゼクティブ・ディレクター のケビン・アシュトン氏(左)とリサーチディレクターのサンジェイ・サルマ氏(右)

 発表された新しい体制では、これまで中心的存在だったAuto-ID Centerが「発展的進化」(アシュトン氏)をとげ、「EPC Global」という新しい組織が立ち上がる。

 Auto-ID Centerは、これまで、大学研究機関を中心に研究開発を進めてきたが、EPC Globalでは実用化に向けたIDの策定や割り当てなどの、実際の運用化に向けた作業を中心に進めていく。

 Auto-ID Centerは、研究を進めるAuto-ID Labsに生まれ変わり、次世代EPCシステムなどの開発を進めていく。なお、日本のAuto-ID CenterもAuto-ID Labsとして業務を継続することになっている。これまで組織に属していた「顧問会議」も構成メンバーはそのままで継続される。


EPC Globalの組織体系。従来のAuto-ID CenterはAuto-ID Labsとなり、研究開発の成果をEPC Globalの標準化委員会にフィードバックする

 顧問会議には、インスパイアの成毛眞代表取締役社長や、「ユビキタス」推進者の坂村健東京大学教授もメンバーとして加わっている。

 Auto-IDと競合関係に見られがちな「ユビキタスID」とその推進者である坂村教授がメンバーとして加わっていることについて、村井教授は「坂村氏はUCCのコード体系を採用する予定であると述べているので、コードがAuto-IDとユビキタスIDの2重体系になることはない」と発言。

 「パッシブタグとアクティブタグへの対応が相違点と見られがちだが、Auto-IDの仕様にはアクティブタグへの対応も組み込まれている」「Auto-IDとユビキタスIDが競合する面は少ない。お互いに得意不得意を補完する関係だ」(村井教授)

 EPC Globalは非営利団体で、その運営は国際EAN協会とUniformed Code Council(UCC)が協同で行うようになる。UCCはバーコードコード体系の策定と普及を推進した団体。「彼らの活動のおかげでバーコードが世界中に普及した」と経産省の新原氏は評価する。

 新原氏は、そのUCCがEPC Globalを運営して、EPCシステムのコード策定と普及活動に参画することで「Auto-IDは大きく飛躍した。Auto-IDは実用化目前」と見ている。

 日本政府代表という形で出席した新原氏は、「経済再生のための物流再生、消費者に安心を提供」にRFIDの普及は大きく貢献するという考えを示し、RFIDの普及のために「規格の標準化」と「チップ価格の低価格化」の必要性を訴えた。


経産省が描く「電子タグ」の経済効果。革命的な流通効率化で国際競争力を強化させ、経済再生を果たす

 「世界中を流通する商品に使われるRFIDのコードでは日本だけの標準はありえない」と考える新原氏。日本発のコード体系を国際標準にするには「この1〜2年が勝負」と早期のコード体系一本化の必要性を述べ、2004年初頭に日本から提案したコード体系を国際標準として公表することを明らかにした。

 あわせて、新原氏はRFID普及のために「電子タグの低価格化」「環境整備」を取り上げ、チップ価格を一つ3〜5円に引き下げる基幹技術開発の2カ年計画「響プロジェクト」を紹介。

 「環境整備」では、プライバシー保護のセキュリティとRFIDに開放する周波数帯に言及。先日、総務省から公表された「空白地帯の950MHz」を中心したUHF周波数開放の制度化について改めて説明した。


UHF帯における日本国内の周波数割り当て状況と、外国の電子タグ周波数割り当て状況。総務省の方針では、現在使われていない950MHzをRFID用に割りあてる予定になっている

 EPC Globalが運用開始に向けた策定業務を行い、Auto-ID Labsが「次世代」EPCの開発を進めることを見ても分かるように、Auto-IDは技術的に完成して実用化目前、というのが関係者の一致した考えだ。

 新原氏は「Auto-IDは実用目前。この1〜2年が勝負の年だ」と述べ、アシュトン氏も「Auto-IDは実用化に向かっている。この1〜2年で実用化の見込み」と意見をそろえている。

 その一方で、RFIDの導入で消費者団体が強く反応する「プライバシー」「セキュリティ」については、配布された資料の中で「具体的な脅威」を示してあるものの、その解決方法は依然として明示されてなく、「技術で克服する」(村井氏)という説明があっただけ。

 坂村氏が「セキュリティ対策が万全になるまで、ユビキタスの立ち上げは待つべし」と考え、「ユビキタスコンピューティングの実現にはあと10年は“必要”」と発言している。

 ユーザーを納得させ、かつ、長期において保証される強固なセキュリティ対策の確立が「1〜2年で実用化の見込み」までにできるかどうか。RFIDの早期普及のためにこの問題を先送りにすることは、決して許されないだろう。

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[長浜和也, ITmedia]

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