News 2003年11月10日 11:10 PM 更新

「メディア容量35Gバイト」のリムーバブルストレージ登場

Zip、Jazz、Click!とリムーバブルストレージを追い続けるアイオメガ。HDD並みのパフォーマンスをだすRRDは35Gバイトの容量を実現。企業向けとアイオメガは言うけれど、日本では「PCで録画した連続ドラマの保存場所」としてコンシューマーに受けそうな予感も。

 アイオメガは11月10日に、新技術を採用したリムーバブルストレージの新製品「RRD」(Removable Rigid Disk)と「DCT」(Digital Capture Technology)を発表。日本で製品発表会を行った。

 発表会には米国アイオメガコーポレーションの社長兼CEOのワーナー・ハイド氏と副社長のスコット・シーハン氏が出席。ハイド氏からはアイオメガの新しいグローバルビジネス戦略について、シーハン氏からはRRDとDCTの特徴についてそれぞれ説明が行われた。


ワーナー・ハイド氏。日本のメディアの前に姿を見せるのは「非常に珍しい」(アイオメガ広報)

 アイオメガは「Zip」「Jazz」を米国市場に普及させたリムーバブルメディアベンダーとしては老舗大手の存在。とくに「Zip」は大容量(当時はフロッピーディスクと比べて、という意味だったが)リムーバブルメディアとして最も早い時期から普及しており、今でも米国では非常にポピュラーだ。

 そんなZipも、最近はCD-RWや記録型DVDに押されつつある。そのような状況でハイド氏が打ち出したグローバルビジネス戦略のターゲットが、中小企業のデータストレージ市場だ。

 アイオメガの説明によると、この先4〜5年におけるストレージ市場の投資伸び率は大企業で4%に留まるのに対し、中小企業では年間成長率が33%にも達するとしている。ZipやJazzによって米国に築き上げたブランド力と知名度と信頼性を背景に、中小企業向け市場に対して自社製品を浸透させていくのが、アイオメガの新しい戦略なのだ。

 今回発表されたRRDは、まさにこの中小企業を狙った新しい戦略の一環として開発された製品である。


製品発表会で示されたRRDの内部構造

 RRDは、ストレージメディアとして容量35GバイトのリムーバブルHDDを採用したデバイスで、安価なデータバックアップメディアとして中小企業で普及しているテープストレージの置き換え需要を狙っている。

 データ転送レートは13〜22Mバイト/秒(アイオメガの説明による平均データ転送レートは18Mバイト)、シークタイムは12ミリ秒。回転数4200rpmの2.5インチプラッタを1枚搭載しており、デバイス全体のフォームファクターサイズは3.5インチHDDと共通となっている。

 アイオメガが置き換えを想定しているテープストレージと比較して「パフォーマンスと容量は10倍。記録する時間は2時間から20分に」(シーハン氏)と説明するように、ノートPC用HDDに匹敵する実力をRRDは持っている。

 デバイス価格(メディア1枚を含む)は349ドルを、カートリッジ式のメディア1枚の価格は39〜49ドルを予定している。1Gバイト当たりのメディア価格を比較すると、主なテープメディアが6〜9ドルであるのに対して、RRDは4ドル台に収まるなど、コスト的にも有利になっている(ちなみにアイオメガの資料では記録型DVDメディアの1Gバイト当たり価格は3.22ドル)。

 HDD型リムーバブルメディアで気になるのが、塵などに対する耐久性と対衝撃性能。RRDのメディアカートリッジは、ドライブに挿入する前の状態では完全に密封されており、カートリッジに導入する過程や、動作中でも2室式のクリーンルーム構造とエアフィルターによって塵の進入を防いでいる。耐衝撃性もアイオメガの説明では「200Gに耐えられる」(シーハン氏)。


アイオメガが示したリムーバブルストレージのスペック比較


RRDを手に製品の説明を行うシーハン氏。RRDの2室式のチェンバーは「200+レベルのクリーンルームに匹敵する防塵性」(シーハン氏)

 RRDはバックアップに使われているテープメディアの置き換え市場を狙っているため、バックアップ作業を容易に行えるソフトもセットになる予定だ。アイオメガがRRDに同梱のは、簡単に行えるファイルバックアップユーティリティーと障害復旧ソフト。バックアップユーティリティーはVeritas Backup ExecやCA ARCServe、Dantz Retrospectなど既存のツールとの互換性がある。また、障害復旧時にはメインディスクが故障していてもRRDが起動ディスクとして動作する「Boot & Run」機能がサポートされている。

 企業向け製品という位置付けのRRD(日本ではビデオ保存用のリムーバブルメディアとしても需要があるように思えるが)に対して、DCTはデジタル家電を含めたコンシューマー市場をターゲットにした製品だ。


左からTypeIIPCカードタイプのDCTリーダ。3.5インチドライブ内蔵型リーダ。DCTメディアカートリッジ

 利用方法はTypeIIPCカードのリーダにメディアカートリッジを挿入するタイプのもので、以前アイオメガから「Click!」の愛称で販売されていたPocketZipと見た目は非常に良く似ている。

 しかし、「R&DからみるとRRDよりもDCTのほうがより大きなチャレンジだった」とハイド氏が述べるほど、その機能はClick!から進歩している。

 カートリッジの容量は40Mバイトから1.5Gバイトとなり、データ転送レートはClick!が0.6Mバイトだったのが最大6〜7Mバイトに、メディアの回転数も3000rpm弱が3600rpmとアップした。

 Click!と同様にPCカードスロットを持ったノートPCユーザーをターゲットにしているが、それ以上に意識しているのがビデオカメラやMP3/MPEG4プレイヤーなどデジタル家電のデータメディア市場だ。「小型、低コスト、堅牢性。DCTはデジタル家電で求められる三つの要素をすべて実現している」(シーハン氏)

 現在DCTは、OEMに対するサンプル出荷が始まっていて、量産製品の出荷は2004年の第2四半期、RRDの製品出荷はそれより早く、2004年の第1四半期に開始する予定。DCTの価格はPCカードタイプのデバイス(メディアカートリッジ1枚を含む)が149ドル、メディアカートリッジが10ドル程度を予定している。

 ハイド氏はDCTの容量について「2年後には2倍、その2年後にはさらに2倍」と述べた上で、CFカードサイズのDCTデバイスが近いうちに登場することも明らかにしている。

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[長浜和也, ITmedia]

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