“ユニクロ化”するクリエイター :部屋とディスプレイとわたし(1/3 ページ)
作っただけではモノは売れない時代に、重要性を増すのは「販売力」。書店の手描きPOPが注目され、「本屋大賞」が話題になるなど、出版の世界でも変化が起きている。電子書籍の時代、突き詰めていくと作家も“ユニクロ化”するのではないか──作家・堀田純司さんの論。
トップバリュ。セブンプレミアム。なんのことかおわかりですね。そう、これらはプライベートブランド(PB)のシリーズ名です。私はPBについて「広告費がかからず、パッケージも簡素な分、価格も安い商品群」といった、通り一遍のごく普通の解釈しか持っていませんでした。
しかし、とうとうPBのビールまで登場してくるに至って、ようやく認識をあらためなければならないことに気がつきました。これは単なるデフレの落とし子ではない。小売り大手がPBに力を入れている現状は、これは要するに小売りの「ユニクロ化」が広がっているのだと思います。製造から販売の時代へ、という変化の象徴です。
連載・部屋とディスプレイとわたし
- 「中二」という病(やまい)と音楽産業
- 成功の再配分──出版社が果たしてきた役割と隣接権、電子書籍
- 北斗の拳とIT言論──意外と共通する「結果は問わない」日本人の原理
- 時代は多様性を欲してはいない──コンテンツのクラスタ化と、むしろ画一化
- そろそろ「ガンダムUC」という“現象”に気がついたほうがいいのかも
- 精神論で語れ、電子書籍 デジタルは人の熱意を伝えることができるのか
- 菊ねえちゃん論──「リンかけ」と「星矢」と女性の社会進出
- 電子書籍で世界がもっと楽しくなる方法を考えよう 「売れる・売れない」を超える「第三極」のために
「販売力」の時代に
その時代その時代において、社会の顔となる産業があります。たとえば経団連の会長というと、かつては重電や鉄鋼、電力など国のインフラに関わる基幹分野の会社のトップが選ばれたものですした。しかし現在では、自動車産業や、さらには家電メーカーなどからが就任するようになっています。もう少ししたら、IT企業から選ばれる世の中になるのかもしれません。プロ野球のオーナー企業なども、わかりやすく時代の顔となる企業の変化を表していますね。
こうした意味において、かつては製造業、メーカーが偉かった。モノがない時代は、とにかくモノをつくる人たちが偉かった。需要と供給のあり方において、供給側にバランスが偏っていて、こうした時代で問われたのは「生産力」。安定した品質で、大量に製造できる生産力こそが重視される時代でした。
しかし世の中にモノが行き渡ってしまった現代では、このバランスが変化しています。モノが供給過剰となり、この需給ギャップはいまだに解消していない。モノが社会にあふれ、その価値が下がってしまうという“デフレの時代”です。
ただ作っただけではモノは売れない。こうした時代に問われるのは「生産力」ではなく、「販売力」です。同じような性能の製品が、いくらでもあふれている社会の中で、モノを売ってみせる力。この販売力が重視される時代になりました。今から考えると、こうした歴史の流れのフロントランナーとなったのが、流通革命を掲げたダイエーの創業者、故中内功氏でした。
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