「ソードアート・オンライン」は「すでに実現しつつある」――落合陽一さん・伊藤監督ら 「SAOが未来の世界観を決めている」(2/3 ページ)
「ソードアート・オンライン」の世界はいつ訪れるのか、実現している技術はあるのか――筑波大の落合陽一助教、同アニメの伊藤智彦監督らが語った。
落合さんが例に挙げるのは、SAOに登場する「ユイ」という妖精のキャラクターを再現する技術。劇中では、ユイは現実世界には存在しないが、AR端末を装着すると見えるようになるという設定だ。落合さんが2015年に発表した「Fairy Lights in Femtoseconds」という技術は、空中にレーザーを照射し、空気分子をプラズマ化することで、妖精の3次元像を描くというもの。指で映像に触れると、静電気のような触覚が得られるという。
このほか、超音波スピーカーを用いて、何もない空中なのに“触っているような感覚”を生み出させる技術もあるという。「ザラザラ、ツルツルといった、表面の形状などのいち特徴しか作り出せないのが現状。だが、任天堂の新型ゲーム機『Nintendo Switch』には触覚を表現する機能(HD振動)が搭載されたりと、(触覚を生み出す技術は)話題にはなってきている」(落合さん)。
そうした触覚の技術は、伊藤監督が映画の演出でこだわったポイントの1つという。「視覚・聴覚情報のデバイスは伝えやすいが、戦闘もののアニメなので、触覚情報を伝えるデバイスをどうアニメで表現するか」(伊藤監督)。
伊藤監督によれば、登場キャラがゲームの世界で触覚を感じていることを観客がイメージしやすくするために、AR端末と一緒に棒状のコントローラーを使うシーンを描いたという。「剣やマイクをキャラが握っているときは、Wii コントローラーのように、何かを持っているほうがよいだろうと考えた。作中では一切説明はないが、敵から攻撃を受けると振動する機能も備えている設定がある」(伊藤さん)。
「地図の表現」にドキドキ
「劇場版で1番ドキドキしたことは、地図の表現がうまいこと」――落合さんはそう話す。「スマホだと画面が小さいし、地図音痴からすると方向がわかりづらい。(AR技術で)空間をダイナミックに使い、地図を表示する演出が面白い」(落合さん)。
その一方、これまでのテレビアニメ版では「地図を表示するシーンがなかったのはなぜ?」と落合さんは伊藤監督に質問。これに対し、伊藤監督は「(アニメ版の舞台となるゲームでは)自分でダンジョンを探索してほしい。RPGは最初からどこへ行けばよいか分からないもの」と説明。落合さんも納得した様子だった。「確かに『Hey! Siri! ラスボスの居場所を教えて』とは言えない」(落合さん)。
何もない空間に地図を表示したり、メニューアイコンを表示したり――など“近未来”の要素が登場する一方、SAOは中世のような世界観が描かれていることも特徴だ。伊藤監督は「『主人公たちはゲームをしている』という、ファンタジーだけじゃない感覚を出したかった」と振り返る。一般的なオンラインゲームのプレイ画面を参考にしつつ、中世の雰囲気とマッチするシンプルなデザインを心掛けたという。
「(空間に情報を表示する操作は)原作小説ではもう少しゴテゴテした記述があったが、コマンドは全てアイコンで表示し、そこからコマンドを選んでいくのが未来では正しいと判断した」(伊藤監督)
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