日立製作所は4月18日、線虫を使ってがんを早期発見する技術の研究を、ベンチャー企業のHIROTSUバイオサイエンスと共同で行うと発表した。線虫ががん患者の尿を好む特性を利用し、自動で解析する装置の実用化を目指す。
HIROTSUバイオサイエンスは、九州大学発のベンチャー企業。線虫ががん患者の尿には近づき、健康な人の尿からは離れるという特性を利用したがん検査法「N-NOSE」の実用化を目指している。同社の臨床研究結果によれば、がん患者をがんだと判定する精度は約93.8%という。線虫は飼育コストが安く、検査費用を低コスト化できるという。
共同研究では、日立が検査工程を自動化する技術を開発。線虫が尿に反応しているかを観察する工程では、線虫の数を光の度合い(輝度)を基にデータ化することで、目視よりも正確に線虫の反応を評価できるという。線虫の状態で検査結果が不安定になるのを防ぐために、線虫の移動度を検査品質の判定基準にする技術も導入したという。
これらの技術を使った自動解析装置を試作し、がん患者の尿で実験したところ、手作業で検査した場合と同程度の精度でがんの有無を判定できたという。今後、両社は装置の実用化を目指し、がんの早期発見の実現に貢献するとしている。
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