「本格展開が始まる」――日本IBMがブロックチェーンに熱視線 狙うニーズは
日本IBMが、ブロックチェーンシステムの開発、運用を支援する企業向けサービス「IBM Blockchain Platform」の提供を始める。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は9月7日、ブロックチェーンシステムの開発、運用までを支援する企業向けサービス「IBM Blockchain Platform」を10月に始めると発表した。米Linux Foundationが提唱するフレームワーク「Hyperledger Fabric 1.0」をベースとし、クラウドサービス「IBM Cloud」上のPaaSとして提供する。金融や製造、小売、物流など、さまざまな業界でブロックチェーンを生かしたシステム開発を後押しする。
IBM Blockchain Platformは、(1)取引をシステム上で確定させる「合意形成」、(2)取引履歴を保存・共有する「分散台帳」、(3)取引ルールを規定し処理を自動化する「スマート・コントラクト」、(4)匿名性や秘匿性レベルを制御する「暗号技術」――などの機能実装をサポート。アプリケーション開発のフレームワークなどを備える「Hyperledger Composer」のほか、複数社にまたがる「コンソーシアム型」ブロックチェーンの形成・運営を手助けするツール群なども提供する。24時間365日のサポート体制も整える。
ユーザー企業の要望に合わせ、プランは「Entry」「Enterprise」「Enterprise Plus」を用意する。Entryは実証実験や開発向け、Enterpriseは実際の業務への利用を想定。Enterprise Plusは、より高いセキュリティ要件を求める企業向けという。
まずEnterpriseを10月から提供。基本料金(13万8600円/税別、以下同)にブロックチェーンネットワークを管理するツール群の利用料金を加え、月額30万円から。他プランは17年内にリリースし、Entryは1時間あたり52.5円で提供予定。Enterprise Plusの料金はリリース時に発表する。
「ブロックチェーンの本格展開が始まる年」
「ブロックチェーンは、いよいよ本格展開が始まる年を迎えた」――日本IBM インダストリー・ソリューション事業開発担当の鶴田規久さん(兼執行役員)はそう話す。
現時点でIBMは、全世界400以上のブロックチェーンプロジェクトを手掛け、国内でも日本取引所グループ(JPX)と技術の実証実験を進めるなど、すでに30ほどの例があるという。
「海外のプロジェクトで得た知見や、開発プログラムなどを国内に持ち込み、効率良く開発できる環境を構築しようと考えている」(鶴田さん)
従来は、開発したシステムの安全性(リスク)、開発費用(コスト)、開発発注から導入までの時間(リードタイム)――のいずれかを重んじると、別の要素が軽んじられるというトレードオフの関係があったという。鶴田さんは、IBMのノウハウを生かし、3つのバランスが取れたアプローチが可能になるとしている。
「ブロックチェーンはどの業界も利用を検討するようになってきた。パッケージで安く提供し、ブロックチェーン活用を広げていきたい」(鶴田さん)
同社サーバー・システム事業部の朝海孝部長は「ブロックチェーンは黎明期。(どの業界各社も)応用分野を絞り込んでいる段階」と指摘する。「どんな価値を構築できるか、どういった技術モデルを作れるか」などを検討し、実証実験で有用性を確かめるという企業ニーズがあるという。こうした局面では「実際に動くブロックチェーンを、コストを抑えていかに早く作るかが重要」(朝海部長)として、日本IBMがサポートしていく考えをアピールした。
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