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超大質量の「モンスターブラックホール」の誕生過程解明 東大・京大などの研究グループ

太陽の10億倍以上もの質量を持つ「モンスターブラックホール」の誕生過程が判明。東大の吉田直紀教授や京大の細川隆史准教授らの研究グループが発表。

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 東京大学、京都大学を中心とする研究グループは9月29日、太陽の3万4000倍の質量を持つ巨大ブラックホールの誕生過程を、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションから明らかにしたと発表した。これにより、太陽の10億倍以上もの質量を持つ「モンスターブラックホール」の出現を、観測数も含めて説明できるようになったという。

 研究グループは、ビッグバン後宇宙の始まりの頃に存在した「超音速ガス流」に着目。国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する「アテルイ」や、筑波大学計算科学研究センターが運営する「COMA」などのスーパーコンピュータを用いてシミュレーションを行い、高速ガス流が乱流ガス雲となり、その中で星が誕生・急成長する様子を再現したという。

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シミュレーションより得られたブラックホール形成時のダークマター分布(背景)とガス分布(内側下3パネル)

 宇宙全体ではガスを含む一般的な物質よりも、ダークマター(暗黒物質)が多く存在。ダークマターはその重力で集積して高密度な領域「ダークハロー」を形成し、宇宙年齢1億年頃に、その質量は太陽の2000万倍ほどにもなるという。

 巨大なダークハローは強い重力で高速のガス流を補足し、高温・高密度で乱流状態にあるガス雲を生成。そこから生まれた原始星へガスが流れ込み、星の表面が膨張していくという。成長した原始星は太陽の3万4000倍の質量を持つ巨大星となった後、ガス雲全体を取り込んでいき、最期には同質量のブラックホールを生み出すという。さらに、こうした巨大ブラックホールはガス降着やブラックホール同士の合体で成長し、太陽の10億倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホール――モンスターブラックホールへ進化できるとした。

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原始星の周りのガス密度分布
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原始星がガスを取り込み成長する様子

 研究グループはこのようにブラックホールの誕生過程を明らかにしたほか、ダークハローの形成時期や超音速ガス流の速度分布から、超大質量ブラックホールのもととなる巨大ブラックホールの出現確率を計算。その見積もりは、これまでに発見された超大質量ブラックホールの観測数と一致することが分かったという。

 これにより、近年観測された最遠方の宇宙に存在する超大質量ブラックホールの起源と成長が説明可能になったほか、将来的にはさらに初期のブラックホールを発見することで、ブラックホールが成長する様子を実際の観測からも示すことができる可能性があるとした。

 研究グループには、テキサス大学オースティン校天文学科の平野信吾さん(日本学術振興会海外特別研究員)、京都大学理学研究科の細川隆史准教授、東京大学大学院理学系研究科/国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員の吉田直紀教授らが参加。

 研究成果は、米国科学誌「Science」(電子版)に9月29日付(米国東部時間)で掲載された。

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