「自動運転レベル」の果たす役割とその弊害:特集・ミライのクルマ(2/2 ページ)
世界中で進む自動運転技術開発において指標となっているのが「自動運転レベル」と呼ばれるものだ。自動化の度合いによって0から5まで6段階のレベルが定義されている。しかし開発の現場からは別の声も上がっている。
システムメインの自動運転でも「レベル2」?
J3016の自動運転レベルが一般にも浸透した一方で、自動車メーカーとは温度差も生じ始めている。10月下旬から11月上旬にかけて「東京ビッグサイト」で開催された「東京モーターショー2017」でも感じたことだ。
モーターショーでは、複数の国内自動車メーカーが当面の目標として、2020年に高速道路限定でシステムメインの自動運転を実現することを掲げた。車線や車間距離の維持に加え、レーンチェンジや分合流など複雑な運転に対応する必要はあるものの、歩行者や自転車が存在せず、信号もない(一部を除く)。市街地に比べれば難易度は低く現実的な目標に見える。それでもシステムがすべての運転タスクを実行するため、機能的にはレベル3をうたっても不思議ではない。
しかし、メーカー側は慎重だ。例えばトヨタの高級車ブランド、レクサスが出展した「LS+ Concept」も同じ目標を掲げたクルマの1つだが、担当者によると「自動運転レベルとしては2になる」という。
「多くのメディアから『レベル3ではないのか』という質問を受けたが、SAE International(のJ3016)が掲げる自動運転レベルはあくまでも考え方を示したもの。(レベル3をうたうことで)ドライバーは何もしなくていい、と誤解される恐れもある」。レベル3はシステムのリクエストがあった場合にはドライバーが対応しなければならないが、言葉だけが先行し、“システムまかせ”のイメージが広がることを危惧していた。
日本の自動車メーカーにとって、自動運転はあくまでも自動ブレーキなどの先進的な安全装備の延長線上にある。交通事故の原因は9割が“ヒューマンエラー”とされ、自動運転技術の進歩が事故削減につながるという考えだ。
警察庁の調査によると、国内の交通事故発生件数は2004年をピークに減り続けており、直近の2016年は49万9201件と2004年(95万2720件)の半分近い。また状態別の負傷者数を見ると「自動車乗車中」の減少が顕著で、自動ブレーキやプリクラッシュセーフティシステムなど新しい安全装備の普及が一役買っていることがうかがえる。
レクサスの担当者は、「そのクルマに何ができて、何ができないか。ドライバーにしっかり伝えなければならない」と強調する。それは自動運転の技術力をアピールするよりも大事なことだという。
【訂正:2017年12月26日更新 ※高速道路に関する記述の誤りを修正しました】
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