「経済的な合理性に加えて、瞬間瞬間の楽しさを形作る“人間的な部分”をどうやっていくのかを常に研究しながら、自販機は進化しようとしている」。日本コカ・コーラの二宮淳氏(コマーシャルリーダーシップ&ベンディング事業部 統括部長)は5月23日、マネーフォワード主催の「Fintech&マーケティングフォーラム2018」の講演でそう話した。
日本全国で稼働している日本コカ・コーラの自動販売機は約98万台。しかし、自販機を利用する理由は「残念ながら『近くにあるから』がナンバーワン」と二宮氏は言う。「近くて便利な場所にあるから」と答えた人の割合は最も多く全体の36.1%だ。その一方で、最近は「電子マネーが使えるから」(4.8%)、「ポイントを獲得できるから」(3.5%)などを理由に自動販売機を選ぶ人も増えているという。
中でもスマートフォンアプリ「Coke ON」対応の「スマホ自販機」は、非対応の自販機と比べて販売数が約3%増加したという。日本コカ・コーラはスマートフォンアプリで一体何をしたのだろうか。
Coke ONは、スマホ自販機とBluetoothで接続し、飲み物を買うごとにスタンプがたまるスマートフォンアプリ。スマホ自販機で飲料を1本買うごとにスタンプが1つたまり、15個ためると好きな飲料1本と交換できる「ドリンクチケット」を獲得できる。
ドリンクチケットと製品を引き換える時には、選んだ製品の画像の出ている画面をスワイプする。ポイントがたまるだけでなく、「スワイプすると商品が出てくる」という驚きや楽しさを提供することで、通常であれば「近くにあるから利用する」という人々の行動を変えようとしている。
「これまでもポイントシステムなどいろいろなアプローチを行ってきたが、それだけでカバーできるお客さまやオケージョンは限られていた。2つの側面で人の気持ちを揺さぶるためにアプリを作り、自動販売機を探してもらったり、スタンプをためてもらったりしている」(二宮氏)
例えば、一定気温を超えたエリアや夏の行楽スポットなど限定で「アクエリアス」を無料で受け取れるドリンクチケットを発行(サンプリング)したり、購買データをもとに製品と関与度の高いユーザーへサンプリングしたり、中高校生を対象にWスタンプやドリンクチケットをプレゼントするキャンペーンを実施したりしてきたという。
「やりたいことは『TPOに合わせて何を提供するか』『どうやったら人の感情に正しいコミュニケーションができるか』だ」と二宮氏は言う。
他にも、ドリンクチケットをギフティやベネフィット・ワン、NTTドコモの電子ギフトサービスで販売したり、設定した1週間の目標歩数の達成や累計歩数の特典でスタンプをもらえるサービス「Coke ONウォーク」を提供したりと、スマホ自販機の活用範囲はさらに広がっている。
2016年4月の提供開始から約2年半で、Coke ONアプリのダウンロード数は920万に達した。Bluetooth機能は既存の自販機に後付けできるため、設置台数も25万台まで順調に増えているという。
「リテールが提供する価値の再デザインをしなければいけないということをよく聞くかと思うが、自動販売機業界もどういう価値を作ると次の世代へ向かっていけるか日々考えている」(二宮氏)
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