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大企業がアジャイル量産手法を手にしたら何が起きる?
10月26日の放送では、独自のハードウェア開発・製造・販売を手がけるShiftall(シフトール)の執行役員 甲斐祐樹さんと、パナソニックからアプライアンスデザインセンター FUTURE LIFE FACTORY デザイナーの足立昭博さんをゲストにお招きし、両社の合同プロジェクトが生み出したウェアラブル端末「WEAR SPACE」について語ってもらいました。
そもそも、Shiftallの代表取締役CEOである岩佐琢磨氏は、2007年にパナソニックを退社して家電ベンチャーのCerevo(セレボ)を創業しました。そして201年2月に新会社Shiftallを設立し、パナソニックに売却(資本金は4000万円で全株式をパナソニックが取得)するという経緯を経て、11年ぶりに“出戻った”格好になります。
そんな両社の関係を甲斐さんに伺ったところ、「2018年で創業100周年を迎えたパナソニックと、1年目のShiftallでは違いがありすぎですよ(笑)。Shiftallはパナソニックの子会社という形にはなっていますが、開発や人事、経理といった会社の組織としては独立して動ける体制と人員を用意しています」と説明。今回手を組んだパナソニックのデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」も設立は2017年4月と若く、身軽に動けるShiftallとの相性も非常によいとのことでした。
パーティーションとヘッドフォンが合体することで手軽にパーソナル空間を獲得できるWEAR SPACEですが、実際にGREEN FOUNFDINGでクラウドファンディングを始めたところ、「国内外でさまざまな反響があって非常に驚きました」と足立さん。これまでパナソニックという規模感のある会社では、エンドユーザーの声を直接聞く機会が限られていたそうで、「クラウドファンディングで生の声がリアルに返ってくるのは新鮮な体験でした」と足立さんが言うと、すかさず「クラウドファンディングは企画や宣伝はもちろん、何から何まで全て自分たちでやる必要があるから非常にやりがいがあるよね(大変だけど)」と合いの手を入れる甲斐さん。お互いのコンビネーションも良好でした。
当初はオフィスワーカーをメインの利用者に想定していたWEAR SPACEですが、展示会に参加したり体験会を実施したりしたところ、子供の勉強や学習塾とかで利用したいという声が出たり、多動性や衝動性に悩む「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」の生活支援ツールとして注目されたり、利き酒用のテイスティングデバイスに利用されたりと大きな反響があったそうです。
「集中するためのデバイスとして登場したWEAR SPACEが、世の中の課題を解決できることが分かってやりがいを感じますね」と足立さんが述べると、「持ち運びやすいように折りたたみができたり、子供向けのモデルも出したいですね」と甲斐さんが答え、「ユーザーの声にはできる限り対応していきたいけど、コスト面が……」と悩ましい声を上げていました。
興味がある方は、ぜひクラウドファンディングへの出資や活動報告に注目して下さい。
甲斐さんは「クラウドファンディングだから失敗できるし、失敗は勉強だからという人もいますが、可能なら失敗はしたくないというのが当たり前ですが本音です。失敗しても起き上がればいい、死ななければ(倒産しなければ)いいということをCerevo時代に学びました」と心情を吐露しました。
「優秀な人材や組織に恵まれているパナソニックと、フットワークが軽い“アジャイル量産”手法が得意なShiftallが手を組むことで、これまでパナソニック内で埋もれていたアイデアを磨いて製品化したり、素早く製品化することで、世の中に一石を投じる製品が作れるのではないでしょうか」と抱負を語りました。
試しにWEAR SPACEをNEWS編集部の松尾デスクが装着したところ、「布の手触りがいいね。視界が遮られて、音もノイズキャンセリングで低減するから、パーティーションがない編集部の環境で原稿を書くときに特に重宝しそう」と、こちらも期待を寄せていました。
Shiftall単体として、オリジナルの新製品を「CES 2019」にも出したいと考えているとのことで、WEAR SPACEともども今後の動向が大いに気になるところです。なぜGREEN FOUNFDINGを利用したのか、WEAR SPACEの次はどうするのか、といった細かい話はぜひ放送で確認してください。
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