最新のCPUと高性能なグラフィックス機能を備える本機に求められるのは、デスクトップPCを置き換えるコンパクトなメインマシンとしての役割だろう。そこでデスクトップPCとの性能比較を行い、本機の実力を明らかにしていく。
比較対象には、前回のレビューに引き続き、同社の従来モデル「MDV ADVANCE 9310ST」を使用した。すでに販売が終了した製品だが、CPUにPentium D 950(3.40GHz)を搭載し、1Gバイトのメモリと250GバイトのHDD、GeForce 7600 GT搭載グラフィックスカードを採用するなど、Pentium D世代のメインマシンとして理想的なスペックを備えた1台といえる。
ベンチマーク編のトップバッターは、PCの各コンポーネントの性能を計測するPCMark05だ。結果を見ると、本機がMDV ADVANCE 9310STを下回り、特にMemory、Graphics、HDDのスコアで大きく水を開けられた。パーツの性能差が出やすいベンチマークプログラムで、かつ主要スペックの大部分が比較対象のMDV ADVANCE 9310STよりも劣ることを考えれば仕方のないところだろう。しかしCPUスコアでは健闘しており、総合性能を示すPCMarkのスコアもメインマシンとして不足を感じないだけの値を残している。
次に3D描画性能を計測する3DMarkの結果を見ていこう。3DMark05は、総合スコアでMDV ADVANCE 9310STが2倍近い大差をつけての圧勝となった。GeForce 7シリーズとほぼ同等の機能を備えているとはいえ、本機のGPUがモバイル向けであること、グラフィックメモリの容量差が大きく影響したためだ。しかし、CPUスコアの結果では完全に逆転しており、Core 2 Duo T7200がPentium D 950を大差で引き離している。特定の条件下ではMeromがPentium Dを超える能力を発揮することを示す結果だ。
また、3DMark06のスコアでも大差でMDV ADVANCE 9310STの勝利となった。そもそも本機のグラフィックスメモリは128Mバイトと、3DMark06が要求する水準を満たしておらず、圧倒的に不利な条件での比較なのだが、その一方でCPUスコアを比べると3DMark05と同様に正反対の結果を示している。
次に、より実際に近いゲームパフォーマンスを調べるため、人気オンラインRPG「Final Fantasy XI」の動作確認用ツールである「Vana'diel Bench 3」を使って、3Dゲームのプレイアビリティをチェックした。テスト前は、CPUの動作クロックとグラフィックス機能で圧倒するMDV ADVANCE 9310STの勝利を予想していたが、蓋を開けてみれば高解像度モード(High)ではMDV ADVANCE 9310ST、低解像度モード(Low)では本機が、いずれも僅差で勝るという結果となった。グラフィックス性能の圧倒的な差を考慮すると、本機の健闘ぶりが目立つ。なお、テスト結果は低解像度モードが標準設定のままで極めて快適にプレイできる「計り知れない(7000点以上)を軽々とクリアしたほか、高解像度モードでも快適に遊べるラインを上回っており、ゲーム用PCとしての本機の適性の高さがうかがえる。
ベンチマーク編の最後は、3Dレンダリングの速度を元にCPUの性能を導き出す「CINEBENCH 2003」で締めくくろう。単に3Dレンダリング性能を示すだけでなく、シングルコアとマルチコアでのレンダリング速度を比較してマルチタスク環境での性能向上の度合いを計測できるのが、このベンチマークソフトの大きな特徴である。
スコアの中で特に注目したいのが、Single CPUとMultiple CPUだ。Single CPUはMDV ADVANCE 9310STが299、本機が248と、Pentium Dに軍配が上がっているが、2つのCPUコアを使ってレンダリングを行なうMultiple CPUのスコアはMeromがPentium Dに勝るという結果となっている。デュアルコアでの性能向上の度合いを具体的に見てみると、Pentium Dが1.88倍にとどまるのに対し、Meromは2.48倍もの大幅な伸びを見せている。デュアルコアに対応したアプリケーションを利用する場合は、本機がPentium D搭載モデルより高い処理速度を得られることを示す結果だ。
続いて実際にアプリケーションを利用する場合に本機とPentium D搭載デスクトップPCとの間で体感速度にどの程度の差が表れるかをチェックしていこう。比較に用いたアプリケーションには、前回のレビューと同様、アップルコンピュータが提供する「iTunes」と、PCのTV機能などで録画した動画ファイルを携帯電話やポータブルプレーヤーで再生可能なファイル形式に簡単に変換できるフリーソフト「携帯動画変換君(3GP_Conberter Version 0.34)」の2つを用いている。なお、iTunesはAppleのサイトから、携帯動画変換君は作者であるCalcium氏のサイトから、どちらも無償でダウンロードできる。
まずは、iTunesを使って音楽ファイルのエンコードに必要な時間を計測する。テストは純粋にファイルのエンコード時間を計るべく、音楽CDに収録された曲をいったんWAV形式でHDDにリッピングし、このファイルをMP3形式とApple Lossless形式にエンコードしている。テストに用いた音楽CDは、全10曲を収録した再生時間40分のアルバムだ。
MP3のエンコードテストは、プリセットされたエンコード条件の中から「良音質(160kbps)」と「標準音質(128kbps)」を選び、それぞれのエンコード時間を計った。エンコードに要した時間は、Pentium Dが良音質で65秒2、標準音質で61秒1、Meromが両音質で58秒3、57秒2と、どちらの条件でも本機がMDV ADVANCE 9310STをしのぐ速度でエンコードを終了する結果に終わった。その差は極めて接近しているが、ノートPCの本機がPentium D デスクトップPCと互角以上の処理能力を見せ付けたこと自体が注目すべきポイントである。
なお、Apple Lossless形式のエンコード時間は、MDV ADVANCE 9310STが本機より高速だが、これはエンコード時に求められるCPUの能力がMP3より低いため、メモリのアクセス速度やHDDの転送速度が結果に表れたものと推測できる。もっとも、こちらもエンコード時間の差は小さく、本機がMDV ADVANCE 9310STに肉迫する処理速度を持つことが確認できる。
携帯動画変換君を使ったテストは、解像度640×480ドット、再生時間約1時間のMPEG-2ファイル(映像ビットレート8Mbps、音声ビットレート192kbps/サンプリングレート48kHz、ファイルサイズ3.48Mバイト)を、320×240ドットのMPEG-4ファイル(映像ビットレート8Mbps、音声はビットレート192kbps/サンプリングレート8kHzのG.726形式)に変換し、処理が終了するまでの時間を計測した。結果はMDV ADVANCE 9310STの9分20秒4に対し、本機は9分38秒5と、MDV ADVANCE 9310STの勝利に終わった。とはいえ、その差はわずか18秒と非常に小さく、本機の性能がPentium D搭載デスクトップPCに迫るものであることを確認できた。
ベンチマークプログラムのテスト結果では、Pentium Dを搭載するMDV ADVANCE 9310STの優位なケースも見られたが、実際のアプリケーションをベースにした比較では、本機がPentium D搭載デスクトップPCに迫る処理速度を体感できる1台であることが分かる。これまで性能面の不安を理由にデスクトップPCからノートPCへの乗り換えをためらっていた人は、m-Book GW7200MDの購入を検討してみてはいかがだろうか。Core 2 Duoを搭載するハイパフォーマンスなノートPCながら、評価機の構成でも19万1100円と非常にリーズナブルで、買い替え目的はもちろん、初めてのPCとしても間違いのない選択となるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社MCJ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年12月31日