新世代サービス「WiMAX 2+」の強みと弱み:“速度制限なし”はWiMAXだけ、220Mbpsで業界最速を奪還(1/2 ページ)
新世代の高速サービス「WiMAX 2+」が10月31日に始まる。月額料据え置きで高速化やマルチネットワーク対応など喜ばしいポイントがある半面、既存WiMAXサービスとは異なる部分もいくつかある。強みと弱みをまとめた。
2.5GHz帯BWAでモバイルデータ通信サービスを展開するUQコミュニケーションズは9月30日、新世代のモバイルデータ通信サービス「WiMAX 2+」を2013年10月31日に開始すると発表した。
WiMAX 2+は、2013年7月29日に2.5GHz帯新周波数追加割当を受け、合計50MHz幅(既存の30MHz幅+追加の20MHz幅)で展開する高速モバイルデータ通信サービス。サービス開始当初は最大110Mbpsにて、既存WiMAXサービスのエリアにWiMAX 2+のエリアを重ねる方法(既存基地局設備を、場所はそのままに両サービス対応基地局に置き換える方法)で拡大する。最大速度の向上などはもちろん、WiMAX 2+利用者は既存WiMAXとWiMAX 2+の両方をシームレスに使用できることで不感エリアを最小限に抑え、かつWiMAX 2+エリアでは積極的に新サービスへ切り替えて利用する制御を行うことで、双方のサービスのネットワークキャパシティを事実上増やせることをユーザー利便性を高める施策の1つとして想定する。
「WiMAXの強みは“ノーリミット”だった。このためWiMAX 2+も他社LTEサービスで付加される1カ月最大7Gバイトの通信まで──といった通信量制限を当面は施さない内容とした。また、価格も現WiMAXサービス(の1年契約フラットプラン)と同等の月額3880円としたので、特に既存WiMAXサービスの“ノーリミット”を評価いただいていたユーザー様には同じく評価していただけると思う。今は数値として上回るサービスが出ているが、今後はWiMAXサービスイン時と同様に“国内最高速”サービスの称号を奪還する」(UQコミュニケーションズの野坂章雄社長)
WiMAX 2+の特長としてUQ野坂社長は、
- 当初は下り最大110Mbps、2014年に最大220Mbpsに高速化。最終的に1Gbps超(2017年目標)の速度を実現する計画
- 既存WiMAXサービスと互換性を維持(2+ユーザーは両方のサービスを利用可能)
- 周波数利用効率を拡大し、ネットワークキャパシティを向上
- TD-LTE方式との互換性を確保したサービスのためエコシステムの構築も比較的容易。端末や設備などを低価格に調達可能
- 高速移動中も利用可能とする性能(現サービスは時速120キロほど→時速350キロでも通信可能に)
の5点を挙げる。
新サービスの開始において特に気になること、それは「では、どこで使えるのか。自宅や会社できちんと使えるのか」とする(2)のポイントだ。
WiMAX 2+のエリアは、サービスイン当初は(利用者が多く、トラフィックがひっ迫するエリアである)都心部環状7号線内から、追って2013年度末(2014年3月末)までに東名阪エリア(7000局対応予定)、2014年度末(2015年3月末)に全国エリアに拡大する計画とする。
ただこの基地局設備は、すでに人口カバー率1億人超で地下街や地下鉄トンネル内などもカバーする既存WiMAXサービスの基地局設備を、WiMAXとWiMAX 2+両対応の設備に置き換えるのみのため、一から拡充した既存WiMAXサービス時のエリア/基地局数強化施策と比べると比較的低コストに実作業を済ませられる。端末はWiMAXとWiMAX 2+、どちらも利用できるハイブリッド機器を用意する方針により「当初から不感エリアは少ない/WiMAXエリアと同等」と見なすことは可能だ。さらに端末初号機の「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」は、KDDIのLTEサービス「au 4G LTE」も利用できる“トライブリッド”ルータのため、より最低限、通信できない場所はより少ないと想定される。
WiMAX 2+対応基地局の“置き換え”は、都市部のトラフィックがひっ迫しているエリアから順次実施し、2013年度末までに7000局の置き換えを計画する。基地局のWiMAX 2+対応により、WiMAX 2+端末での通信は当然WiMAX 2+ネットワークを優先的に使用するため、既存WiMAXネットワークも含めて容量拡張(混雑度合いが減る)を実現できることになる。追加の20MHz分を足した連続50MHz幅によるWiMAXサービスの容量拡張は例えると「高速道路の専用レーンを追加すること」に相当する。専用レーンを走るにはそれに対応した新しいクルマ(WiMAX 2+対応機機)が必要だが、そのクルマはこれまでのレーンも走れる──という感じだ。
対応機機はひとまずWi-Fiルータ型の「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」を用意する。WiMAXとWiMAX 2+、そしてKDDIのau 4G LTEネットワークをそれぞれをシーンに応じて使い分けられる対応ネットワークの広さを大きな特長とする。
ルータ操作にて「ノーリミットモード」「ハイスピードモード」「ハイスピードプラスエリアモード」と3つのモードに切り替えて運用する。若干ややこしいが、WiMAX 2+ユーザーであれば普段は「ハイスピードモード」(WiMAXとWiMAX 2+を利用可能)を、WiMAXエリア外のみ、800MHz帯のau 4G LTEネットワークも使える「ハイスピードプラスエリアモード」(WiMAX 2+とau 4G LTEを利用可能)に切り替えるイメージになるだろう。
「モードを手動で切り替える」のは少し面倒そうだが、HWD14でのau 4G LTEネットワークは、かつてのWiMAXスマートフォンの「+WiMAX」オプションのように、使用料金の加算(1055円/月)は「使用した月のみ」となるのは喜ばしい。au 4G LTEネットワークは1カ月7Gバイト/3日1Gバイトまで(超えた場合は月末まで128kbpsに制限)とする通信量制限こそ存在するが、あくまで2つのWiMAXサービスのエリアを補完するものと考えるユーザーならば、通信量上限はあまり深く考えずに“予備”として運用できると思われる。
最後に月額料金を「3880円/月」の定額制に据え置いたのも、モバイルデータ通信環境のメインサービスとして使う層とすれば現時点かなり魅力だ。WiMAX 2+については1年→2年契約縛りに変更されたこと、そして「当面2年間のみ」というキャンペーン的な設定で、3年目以降は上限7Gバイト/月の制限(ハイスピードモード+ハイスピードプラスエリアモードを合計した通信量)を施す“予定”にて、月額料金も4405円/月となる但し書きはあるのだが、「こちらは予定であり、施策や価格は現時点での市場トレンドに合わせた。2年後、状況次第で内容は変わるかもしれない」(野坂社長)と、後年の状況に応じて“このまま継続”(あるいは変更)となる可能性を示唆した。
料金プランについて、当初は他社LTEサービスのような通信量上限ありの半定額制、あるいは「コンテンツサービスと連携し、Kindle型と呼ばれる“コンテンツ売上げの一定%を通信料金として徴収”するスタイルで、実質通信料を少額に抑える料金プランとする計画がある」などが想定されたが、ひとまずプランは1つのみで展開する。
「WiMAXサービスでは、1Day(一日利用プラン)、あるいはTry WiMAX(1週間、試用できるサービス)などもあるが、現時点は後日検討する──というコメントにとどめさせてもらいたい」(野坂社長)
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