買いたい人が多数、在庫もある、それでも出荷されない製品の裏事情:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
メーカーが何らかの事情で、限られた人にしか製品を売りたくないケースは少なくない。現在で言うと「Amazon Echo」がその典型例だろう。具体的にどのようなパターンが考えられるか、過去の失敗例なども挙げながら見ていこう。
サーバの負荷を考慮して出荷を制限している可能性
もう1つ、製品購入後のサポートなどに限界があるがゆえに、出荷数を制限するパターンもある。
ここでいうサポートとは、文字通りのヘルプデスク的なサポートよりも、オンラインの回線およびサーバのキャパシティーを指す。最近は、ゲーム機にせよスマートスピーカーにせよ、購入後にネットに接続し、クラウド上で設定を行ったり、サーバが処理を受け持つ製品が増えつつある。
こうした場合、サーバの負荷を甘く見積もっていると、ユーザーからのアクセスが殺到し、製品が利用できなくなってしまう危険性がある。そうなると、どれだけ完成度が高い製品であっても、動かないという評判が出てしまい、下手をするとブランドに致命傷を与えかねない。
ここ数年の事例で言うと、楽天Koboの最初の電子ブックリーダーが、サービスイン初日にユーザーからのアクセスが殺到して初期登録のサーバがまともに動かない状態になり、大量の難民を生み出すというケースがあった。
このケースでは、製品そのものの品質にも問題があった他、その後に悪い評価の付いたカスタマーレビューを削除するという暴挙もあり、当初のサーバトラブルの印象がかなり薄れてしまった印象だが、そもそも販売形態が直販だったことを考えれば、購入者の手元に製品が届く日を分散させるなどのコントロールをすることで、あれほどの騒動にはならなかったはずだ。
海外を優先した可能性も?
以上のようなケースが考えられるわけだが、では冒頭のAmazon Echoはどうだろうか。
可能性が高いのは、最初に挙げた、リテラシーが高いユーザーを選んで先行販売したいのでは、というものだが、ここまで挙げたパターンを1つずつAmazon Echoに当てはめて考えていくと、どれもが理由としてあり得そうに思えてくる。もちろん、2つ以上の要因が重なっている可能性もある。
Amazon Echoならではの特殊事情としては、これまで海外で展開されてきた製品であり、他社とのシェア争いも激しいことから、ひとまず年末の商戦期はそちらでの販売を優先させたかったのでは、という見方もある。実際、Echoファミリーの製品の中には、今回のクリスマスの前後で、かなり品薄になったモデルもあるようだ。
もしこれが事実だとすれば、年末の商戦期を終えたタイミングで、在庫豊富なモデルが日本向けに再梱包(こんぽう)され、ドッと入ってくる可能性があるし、そうなればどのような理由で販売が絞られていたのか、うすうす見えてくるだろう。いずれにせよ、招待メールが届かず悲観しているユーザーは、もうしばらく我慢の時が続きそうだ。
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