> レビュー		2003年5月30日　09:27 PM 更新

35mmフルサイズのCMOS――半年経過するもライバル不在
キヤノン　EOS-1Ds（3/3）

前のページ

　もちろん何よりも大事なのは、このカメラが叩き出す画像データの秀逸さ。業界最高峰の美しさは愉快でさえある。欲しいけど買えない症候群の患者はたくさんいそうだ。しかし垣根を越えてオーナーズライフを歩み出した人で「後悔」の二文字を口にする人は見かけない。とにかく納得の画質が撮れるカメラである。

　1Dでは絶対に不可能なクオリティの画質を実現してくれるが、1D並みのクイックな撮影レスポンスは今のところ望めない。これはバッファメモリの増設などによるマイナーチェンジでアップグレードを図ってほしい。作品づくりになら、今のままでもいいけど。

EOS-1Ds：作例

　このページの画像はWeb掲載用に加工してあります。リンクをクリックすると、手を加えていないオリジナル画像を見ることができます。

• 作例01「子ども01」

＜撮影データ＞使用レンズ：EF24-70mm F2.8L USM、焦点距離：70mm、絞り優先AE（F3.2、1/60秒）、EV補正+1/3、ISO感度：400、WB：蛍光灯（オリジナル画像はこちら）

　今どきの子どもは、小学1年生でも携帯を持ち歩いてメールにご執心だ。子どもの肌の質感が伝わる解像感が見事だ。

　蛍光灯の光源で、ホワイトバランスは蛍光灯に設定。ややシアンがかぶっている。光量変化があまりない優秀なレンズなので、これはカメラ側のWBの問題と思われる。色温度で設定すべきだったと反省。1DsのAFをよく生かしてくれる描写力の高いレンズだが、ISが付かない最も重いズームかもしれない。光量不足での手持ち撮影は、長時間の用途となるなら見送るのが吉。

• 作例02「ポートレート」

＜撮影データ＞使用レンズ：EF300mm F4L IS USM、焦点距離：300mm、絞り優先AE（F4、1/25秒）、EV補正なし、ISO感度：400、WB：4900K（オリジナル画像はこちら）

　望遠ポートレートの醍醐味である露出解放＆バック飛ばし。実にオーソドックスな写真であるが、モデルのきれいな肌を引き立てたかったので……。35mmフルサイズCMOSのメリット（被写界深度によるボケ量）を最大限生かせた作例かも。逆にいえばピントにシビアな条件を突きつけられるわけだが。ミックス光源の室内だったので、WBはマニュアル設定に。カラーマトリックスは肌色に最適化した「2」を選ぶ。

　特に機械に注文をつけるべきところは見当たらず。レンズのAFは評判ほど遅くないし、手持ちで十分使える適度な重み。レンズのAF速度については知人のモデルだったから緊張感もなく何の問題もなかったが、撮影会のようなシーンでは黄色信号が灯るかもしれない。カメラ本体のスピードメリットを殺いでしまってはもったいない。シチュエーションを選ぶべきレンズ。

• 作例03「さくら」

＜撮影データ＞使用レンズ：EF300mm F4L IS USM、焦点距離：300mm、絞り優先AE（F4、1/1250秒）、EV補正なし、ISO感度：125、WB：日陰（オリジナル画像はこちら）

　やはり1Dsは風景で最高の実力を見せつける。ドラマでよくロケ撮影に使われる近所の高級住宅街は、桜の名所としても知られる。満開の時期に桜のトンネルの下を行くクルマを撮った。MFでピントをクルマのテールランプに合わせている。

　カラーマトリックスは「1」。風景モードに最適化した「3」とも撮り比べたが、「3」で「WB＝くもり」よりも、「1」で「WB＝日陰」のほうが個人的には好ましい色になった。PCでの色補正は一切なし。アンダー気味が功を奏し、クルマのボディに明暗の差がついて遠近感が増した。陽が傾き出した光の色加減も正確に伝わってくる。

　1Dsは風景で作品づくりに打ち込めることを私は確信した。道端に座り込み、低い視点から手持ちで撮影。安定感のない姿勢でも、カメラ＆レンズの重量バランスでシャッターは押しやすく感じた。

• 作例04「子ども02」（RAWファイル）

＜撮影データ＞使用レンズ：EF24-70mm F2.8L USM、焦点距離：62mm、絞り優先AE（F2.8、1/40秒）、EV補正なし、ISO感度：400、WB：6400K（オリジナル画像はこちらからダウンロードしてください）

　突然カメラを向け、正面からとらえる。蛍光灯の光源であったため、WBを色温度でマニュアル設定。子どもの肌をピュアに表現すべくカラーマトリックスは「1」に。AFはバッチリと瞬時に瞳に焦点を合わせてくれた。最高級機のAFにはやはり格の違いを痛感させられる。

　RAWのレンジ幅はやはり広い。毛穴まで見えそうな勢いではないか。画面左手のシャドー部はやや落とし過ぎの色調傾向を感じる。パラメーターはすべての作例で標準から動かさずにテストしているのだが、このカットでは現像カーブをいじってみてもよかったかもしれない。画面右手と左側でコントラストが激しいこのようなシーンで、評価測光がいい仕事をしてくれた。顔はきっちりと適性露出になっている。大口径ニーヨンナナジューの真価（色乗り、描写）も、手放しで褒めたい。

[島津篤志（電塾会友）, ITmedia ]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 3/3 | 最初のページ

---