> ニュース		2003年7月8日　01:30 PM 更新

Interview
バイオノートTR　「目指したのは“イッパンジン”のためのモバイルPCです」（3/4）

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　例えばその成果は、液晶パネル脇に装備されたボリュームボタンなどに現れている。残念ながら中域以下のボリューム感がない液晶上のステレオスピーカーだが、ディスプレイに近い位置にスピーカーが存在するため、ステレオ効果は高く音像定位の不自然さもあまり感じない。

　またヘッドフォン端子も「アナログ部分の配線を極力短くし、ノイズ混入や音質低下を極力避けた。ヘッドフォン端子のすぐそばにオーディオCODECチップを搭載しています」という。確かにハイインピーダンスのヘッドフォンを駆動する能力こそないものの、一般的なインピーダンスのヘッドフォンならば、ノイズの少なさや音質面での優位性を感じることはないだろう。

光学ドライブを取り外すと、フレキシブル基板を多用してすき間を埋めた苦心のレイアウトが見えてくる。右端手前にあるのがオーディオCODECを搭載したサブ基板。アナログ部がノイズを拾わないように端子に近い場所に置いている

　しかし、それだけで“AV機能の質を高めた”と大きな声で言うほどに大きな機能改善とは言いにくい。そこで彼らが取り組んだのが液晶パネルである。

　TRに採用された液晶パネルは、反射率を50％低減するARコートを施し、アンチグレア処理を行わない、いわゆるツルツル液晶の新開発クリアブラック液晶だ。インバータ効率や導光板の改善で250カンデラという明るい輝度、アンチグレア処理を行わないことによる色純度の向上などで、美しい色再現を実現した。特に動画再生時の色は従来の小型ノートPCの枠を超えたものだ。

　液晶表面が滑らかな液晶パネルは、色純度は高まるものの、背景や光源の写り込みが激しく、特に携帯してさまざまなシチュエーションで使わなければならないモバイルPCでは、デメリットも小さくない。しかしARコートの効果は、あらゆる場面で完璧とは言えないものの、ツルツル液晶のデメリットをある程度打ち消すことに成功している。

　「光学ドライブを搭載することで期待されるのは、やはりAV系の機能だと思います。AV機能を重視したバイオシリーズも、サブノートクラスになるとAV色が薄れてしまう。そこで、このサイズで何ができるのか、を検討し、TRの目玉の一つに据えたのがクリアブラック液晶でした。クリアブラック液晶にすることで左右方向の視野角を広げたことは、目の位置が近くなる小型ディスプレイの機種に向いた特徴です。また、パネルの背が低いため、写り込みも避けやすい」

　ここで視野角の話が出ているのは、クリアブラック液晶のARコート層が、視野角を補正する光学補償フィルムの役割も兼ねているからである。上下視野角はそれほど広くないが、左右の視野角は広く取られており、二人で一緒にDVDを見る場合でも見にくさを感じない。

女性的ではなく中性的、存在感を消したデザインを目指す

　ところでこのTR。最初に見た時の印象は、非常に複雑なものだった。それは筆者が主に仕事を目的としてPCを使う男性だからかもしれない。真っ白で、丸みを帯びたバイオノートTRのデザインはどこか女性的な柔らかさ、角の少なさを感じさせ、パールホワイトと明るいシルバーの外装は無骨なビジネスツールとは一線を画す。

　しかしその分、気恥ずかしい感じもする。バイオノートQRのデザイン要素も受け継いでいるように見えるTRは、男性的な色遣いと柔らかな曲線を融合させたSRXのデザインとも方向が異なる。正直に告白すれば、出先で自分がTRを開く姿を想像するとちょっと照れくさい。

　「TRでは“メカメカしい”部分を、徹底して排除したんです。デザインの出発点として、“パソコンってそんなに偉いもの？　もっと自己主張を弱めてもいいのでは？”という素朴な疑問がありました。TRは常に携帯して、日常生活の道具として使って欲しい。だからアクの強くない生活の中で自己主張の強くないデザインを目指したんです。携帯電話のデザインをイメージしました。女性的と感じられているようですが、男女両方に使ってもらえる中性的なデザインに仕上がっていると思います」

　確かにオフィスの中、あるいはデジタルもので埋め尽くされた部屋の中では目立つ存在のTRも、明るい現代的な生活空間の中には溶け込むようにも思える。それをして、アタマの中で気恥ずかしいと思ってしまうのは、僕のアタマが古いからなのかもしれない。TRは目立つ存在ではあるがアクの強さはない。

[本田雅一, ITmedia ]

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