> ニュース 2003年7月8日 01:30 PM 更新

Interview
バイオノートTR 「目指したのは“イッパンジン”のためのモバイルPCです」(4/4)


前のページ

 そんなアクのないTRのデザインの中で、特徴的に見えるのが液晶パネル上に取り付けられたカメラ。バイオC1的なAV機能の象徴かと思いきや、スペック的にはおとなしくMPEG-2エンコーダも搭載しない。

 「内蔵カメラでバンバン撮影してください! というイメージで付けたわけではありません。TRではビジュアルなコミュニケーションを手軽にできるようにしたかった。その性格はC1とは異なるものです」

 TRを携帯する日常の中に、ビジュアルなコミュニケーションを当たり前のものとして取り入れたかったということなのだろう。

技術屋としてはちょっと悔しい部分も。でも僕らには僕らの目指すものがある

 PCとしてのスペックに目を移してみると、より大きいサイズのLet'snote W2に重量面で負けているという事実がある。もちろん、それはさまざまな選択肢の結果としてのものだが、金属外装を伴わないベアのドライブユニットを組み込んだW2の手法を、どのように見ているのか。

 「光学ドライブをB5サイズに持ち込んだのは松下さんが最初でしたし、R1、T1と続いて“もう1モデル”と聞いていましたから、何か特別なことをやって来るだろうという印象はありました。技術屋としての本音を言えば“やられたなぁ”と思う部分もあるけれど、コストとのバランスや、なによりワールドワイドでの出荷量を確保しなければならなかったTRの場合、今回の選択肢は間違っていなかった」

 「エンジニアの想いばかり強くして、誰にでも負けないテクノロジーエッジじゃなければならないという機種ではありません。性能・機能・コスト・生産性・コンポーネント調達。これらをバランスさせて、あらゆる人たちにモバイルパソコンを提供することが目的でしたから」

 個人的には“エレキ”の分野で、もう少し頑張ってほしかった。TRはDVDを見る上でなんら困らない輝度(中間輝度)で、フル充電からタイタニックをフル再生する力がある。しかし業界最高の省電力性までには至っていない。“スタミナのソニー”をうたうならば、省電力性能では最先端であってほしかった。軽量とスタミナは、かつてソニー製品の優位性を示すキーワードだったはずだ。

 「消費電力に関しては、われわれも相当なレベルに達していると考えています。開発中にも、どんどんバッテリー駆動時間が伸びていった。一方の重量面。松下さんの一連の製品に関しては、最初に効率の良いエレキ周りのデザインから入って、レイアウトや筐体設計を合理的に行ってから外装デザインとのすり合わせを行っているように見えますね。それによる基板の小ささやレイアウト的な無理のなさが積み重なって重量を軽くしています。たとえばフレキシブル基板を彼らは使っていない」

 「逆にTRはデザインコンセプトがあって、それに合わせてエレキの設計をしています。もちろん、トレードオフとして割の合わない部分はデザイン担当との話し合いになりますが、最終製品のパッケージを重視するのがわれわれのやり方。そのあたりの思想的な違いが、重さの違いになって現れていると言えるでしょう」

 正直に言えば、前作並みの重量とフットプリントで、2スピンドルにしたのは、なかなか立派だとは思う。ほとんど動かないが、安全のために冷却ファンも内蔵した上での2スピンドル。ただ、いちモバイルパソコン好きとして現状に満足してほしくはない。

 「今回、僕らはキーパーツが同時期に揃うという恵まれた瞬間に製品を開発することができた。i855GMがあって、Pentium Mがあって、新しい液晶パネルをTR用に新規に起こしていいと言われた。9.5ミリ厚の光学ドライブもある。だからこそTRという作品を作り出せた。でも技術は常に進歩しますから、一つの場所にとどまるつもりはありませんよ」


小型・軽量化は目指しても温度制御を行う冷却ファンは取り外せないと鈴木氏。右がSRX用、左が小型化したTR用だ。冷却ファンが可能な限り動かないように設計はするが、筐体温度が必要以上に上がらないよう、冷却ファンは必ず装備する





関連記事
▼ 「バイオノートTR」メイン基板の「表」と「裏」
発表以来、「むむっ」とうなったSRユーザーや、「ええっ」と驚いたC1ユーザーをずいぶんと目にしてきた。そんなソニー「バイオノートTR」の「腹の中」を、企画担当者や開発者とともに明らかにしていこう。

▼ ソニー、WXGA液晶搭載2スピンドル「バイオノートTR」

[本田雅一, ITmedia ]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 4/4 | 最初のページ


モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!