> レビュー 2003年12月8日 08:35 PM 更新

インクジェットプリンタ絵作り大研究――第1回「自動調整時の色合い」(4/5)


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非常に良好な絵作りだが、一部色域での誇張が目立つPIXUS 990i

 キヤノンは昨年、「PIXUS 950i」において、誇張がほとんどない、良く言えば自然、悪く言えば地味で目立たない絵作りを行った。この絵作りは、特に銀塩フィルムからの印画紙プリントを見慣れたユーザーには好評だったものの、一般ユーザーには冴えない色というイメージがあったように思う。実際、キヤノンが行ったパネルテストでも、PIXUS 950iの絵作りは幅広いユーザー層に受け入れられるものではない、という結果が出ていたという。

 その反省からか、今年のキヤノンは徹底して“見栄え”を追求した絵作りになった。日陰の人肌も健康的に、普通の夕景も見違えるほど鮮やかに、明暗のコントラストもメリハリよく、といった具合だ。この傾向は今年のPIXUSシリーズすべてに見受けられるが、その中でも990iは特に派手な設定となっている。キヤノン製の他モデルに比べてPIXUS 950iが地味になっていたのとは対照的だ。

 もっとも、派手になったとは言っても、特定の色域以外まで不自然な絵作りになっているというわけではない。コントラストを強調気味と述べたが、シャドウ部の階調がなくなるほど潰れるわけではないのだ。キャンギャルの写真を見てみよう。


左が元画像、右がレタッチ後の画像を印刷した結果

 元画像のままでも、それなりのコントラストで印刷されている(スキャンデータは、階調を見るため意図的に黒を浮かせているので、多少黒浮きしたように見えるだけ)。しかしレタッチ後の画像を見れば、シャドウ部は明るさゼロまできちんと表現できていることが分かるだろう。

 肌色は従来よりも多少赤みを強くするようにチューニングしたそうで、パラソルの日陰にありながら、きれいな肌の描写になっている。実際のデータは、実はここまできれいな色ではないが、うまく色相や彩度をコントロールして、階調に不自然な部分を作ることなく、好ましい肌色へのシフトを行っているようだ。

 一方、レッドインク(実際にはオレンジインク)の追加によって改善されたという夕景の写真はどうだろうか? 実は夕景写真の描写では、よいところと悪いところの両面が見つかっている。


オレンジの鮮やかさが目立つ反面、階調のつながりに不自然な部分も見受けられる

 キヤノンによると、レッドインクで拡張した色域の中にはsRGB外の色も多く、これを活用するために、ドライバ側で積極的にオレンジ領域を拡張して表現する処理が行われているという。つまり、オレンジが本来の色よりも鮮やかになるわけだ。

 しかし、当然ながら、オレンジだけを派手にするわけにはいかない。色相や明るさ、彩度などは連続して変化するもので、一カ所をいじれば、他の多数の色まで変えなければ不自然な階調になってしまうからである。

 この4枚の写真では、その功罪がハッキリと分かる。夕景のオレンジ部分に関しては概ね良好な結果を示しており(元データよりははるかに派手だが)、これだけを見ればキレイだと思うことだろう。パネルテストなど第三者への印象度テストを行えば、キヤノンがきれい、という人が多いように思う。

 しかし、オレンジを中心とした色域を積極的に利用した結果、下2列の写真ではオレンジから濃青へのグラデーションで不自然な疑似輪郭が発生してしまっている。また、いくらオレンジを積極的に使うとはいえ、右上の写真に関しては少々やりすぎという印象も拭えない。

 また次の写真においては、浜辺の描写でシャドウに繋がる部分で色相が転じる部分が見受けられた。スキャン画像ではわかりにくいかもしれないが、砂浜の濡れている部分と濡れていない部分の境目で、不自然な青紫が目立つ。


高濃度の暗い青のうち、ごく一部の特定色域だけ色が転ぶエリアがあるようだ。未掲載だが、JIS標準画像の中にも同様の色域を含む写真があった。ただし、滅多に現れない欠点ではある

 これ以外の画像に関しては、一言で言えば“見事”。破綻なく、階調が飛んだり、色相が不自然にねじれるところがない。それでいて、ポイント、ポイントは見栄えのする色遣いで、好感度の高さと自然な描写のバランスがよい。

 特に、ゴールドスペックジョウフィッシュ(金色眉毛の魚)、クマノミ(とその背景のイソギンチャク)、イソバナ、紅葉などの描写は、トーンカーブも適切で好感を持てた。また、子供の肌色が非常にきれいに出ている点も高評価できる。浜辺の写真も、前述の例を除けば、PIXUS 990iがもっともうまく表現できていると思う。

 元データに対して、決して正直な絵が出てくるわけではないが、ドライバの設定を何も変えなくても、ここまで見栄えが良く、かつまとまりのよい絵作りの写真が出力できれば、満足度は高いだろう。それだけに、前述した不自然なトーンジャンプ(?)が残念なところだ。










[本田雅一, ITmedia ]

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