VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集

VRで見えないビル風を可視化、熊谷組が開発BIM/CAD

熊谷組がVRを活用した風環境可視化技術を開発。ビル風の原因をより簡単かつ正確に把握できるようになり、設計品質や住環境性能の向上に役立つという。

» 2018年03月19日 06時00分 公開
[陰山遼将BUILT]

 熊谷組は2018年3月15日、VR(Virtual Reality)を活用した風環境可視化技術を開発したと発表した。流体解析とVR技術を組み合わせたもので、本来は目に見えない3次元の風の流れをVR空間上で可視化できる。従来の方法と比較して、ビル風の原因をより簡単かつ正確に把握できるようになり、設計品質や住環境性能の向上に役立つという。

熊谷組の本社ビル周辺の風環境をVRで可視化した様子 出典:熊谷組

 開発したシステムは、まず流体解析で得られた風速や風向のデータを指定のフォーマットで出力。この解析データと建物周辺の3Dモデルを用いてVR空間で風の流れを可視化するアプリケーションを作成し、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を通して風環境を確認できる。

採用したSamsungのヘッドマウントディスプレイ 出典:熊谷組

 効率的なビル風対策の立案や、顧客への風環境におけるプレゼンテーションなどに適用可能。専門知識を持たない人でも「どこでどのように風が流れるのか」「強い風・弱い風がどこで吹くのか」を視覚的にとらえることができるため、設計者や顧客との合意形成や、強風による事故防止の注意喚起ツールなどとして大きく期待できるという。

 VRアプリケーションを作成するプラットフォームにはUnityを、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)はSamsungの「GearVR」を採用。GearVRの採用理由については、Android OSのスマートフォンで動作するため、専用のPCを用意する必要がなく、会社から離れた場所でのプレゼンテーションや打ち合わせに対応しやすいためとしている。

 流体解析を行う部分と、VRアプリケーションの作成は独立したシステムとなっている。そのため、流体解析に利用するソフトウェアの種類は問わないという。また、作成したVRアプリケーションはLAN接続することで複数人が同じ空間を同時に体験できるため、打ち合わせやプレゼンテーション時に出席者の意思疎通も図りやすいとしている。

 今後は風環境のリアルタムでの可視化、AR(拡張現実)機能の拡張、オンライン化などの機能拡を進める方針だ。

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