LED照明と空調を「タスク&アンビエント方式」に、エネルギー消費量を大幅に削減:スマートオフィス
最先端の省エネ技術を駆使した大規模オフィスビルが都心で完成した。清水建設が8月から新本社に利用する地上22階建てのビルで、外壁に太陽光発電パネルを装着したほか、LED照明と空調は消費電力を大幅に削減できる「タスク&アンビエント方式」を採用した。
3年以上の工期を費やした清水建設の新本社ビルが完成した(図1)。高さ106メートルのビルには各種の省エネ技術が取り入れられており、東京都の標準的なオフィスと比べると、CO2の排出量に換算して62%もエネルギーを削減できるという。
最大の特徴はLED照明と空調に「タスク&アンビエント方式」を採用したことである。LED照明と空調機器を一律に設置するのではなく、個人の作業スペース周辺(タスク)とオフィスの室内全体(アンビエント)で機器や設備を分け、両者の組み合わせによってエネルギーを効率的に使う方法だ。
天井に設置したLED照明による照度は、通常のオフィスで必要とされる700ルクスよりも低い300ルクスに抑える。その代わりに個人の机上にLED照明スタンドを設置して、必要な時だけ点灯して合計で700ルクスの照度にする。空調も同様に個人の机の下に給気口を設けて、体感や好みに合わせて調整できるようにした。この結果、空調エネルギーを従来のオフィスと比べて約30%、照明エネルギーはLEDタイプを使うこともあって90%も削減できる予定である。
このほかにも最新の省エネ技術が組み込まれている。「ハイブリッド外装システム」を採用して、ビルの外壁のフレームの中にガラスだけではなくて太陽光発電パネルも装着した(図2)。これにより合計962枚のパネルを装着でき、年間に約8万4000kWhの電力を作り出すことができる見込みだ。ちょうど昼間のLED照明に必要な電力をカバーできる量に相当する。
発電能力を高める一方で節電のための新しい仕組みも取り入れた。オフィスで使うパソコンの電源を遠隔で制御できるシステムである。電源が入っていても一定の時間使われていないパソコンに対して、ビル内にある中央監視システムからディスプレイの電源を自動的にオフにしたり、CPUをスリープモードに切り替えたりすることができる。こまめな制御によってパソコンの電力消費量を最大で30%、ビル全体でも5%程度の節電効果を想定している。
清水建設は新本社ビルを8月から使い始める予定で、各種の機器によるエネルギー削減効果を見ながら微調整を続け、2015年までにCO2排出量の削減率を当初の62%から70%にまで高める計画である。
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