停電時にも動く電力供給システム、太陽電池+蓄電池+燃料電池で:蓄電・発電機器
東日本大震災の津波によって甚大な被害を受けたJX日鉱日石エネルギーの仙台製油所で、最新の電力供給システムが稼働を開始した。太陽光発電とガスコージェネレーションに加えて、軽油によるエンジン発電機も設置して、蓄電池と組み合わせた非常時の電力供給体制を強化した。
仙台製油所はJX日鉱日石エネルギーの東北地域における中核の拠点だが、2011年3月の大震災による津波でタンクローリー出荷設備に甚大な被害を受け、石油の供給体制に大きな影響が出た。復旧にあたっては出荷設備を地盤の高い場所に移し、事務所のビルには自家発電設備と蓄電池を導入して非常時にも電力を供給できるシステムを構築した。
一方で出荷設備が被害を受けた地盤の低い場所には新たに1MW(メガワット)のメガソーラーを設置して、2013年2月25日から電力会社に送電を開始した(図1)。故障を早期に発見する監視システムのほか、複数のメーカーの太陽電池パネルを使って比較検証を実施する。メガソーラーの建設・運営に関するノウハウを蓄積して、今後の事業に生かす考えだ。
新しい事務所に導入した太陽電池パネルも複数のメーカーの製品を採用した。発電能力は合計で15kWと小規模だが、ほかに発電設備として燃料電池を使ったガスコージェネレーション(エネファーム)、さらに軽油を燃料にして104kWの発電が可能なエンジン発動機を併用する。
通常時は3種類の発電設備と電力会社からの系統電力を組み合わせて利用できるが、停電時にはエンジン発動機だけに制限する(図2)。この状態で通常時の50%程度の電力を24時間まで供給することができる。と同時に日中の太陽光発電による電力を蓄電池に入れておき、以降は蓄電池から事務所に電力を供給する仕組みだ。蓄電池の容量は30kWhある。
企業にとってはBCP(事業継続計画)の中で、非常時の電力確保が重要な課題になっている。ただし機器の導入コストなどを考えると、十分な対策をとることは難しいのが現状だろう。被災した企業の実施例を参考に再検討したいところである。
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