「火の国」に広がるメガソーラー、工場の空き地から牧場の跡地まで活用:日本列島エネルギー改造計画(43)熊本
熊本県は別名「火の国」と呼ばれ、日本有数の活火山である阿蘇山を擁する。実際に地熱の利用量は多いが、最近はメガソーラーの建設計画が急速に増えている。2009年から推進中の「くまもとソーラープロジェクト」の効果で、沿岸部から山間部まで太陽光発電が広がってきた。
小水力からバイオマスまで、熊本県では再生可能エネルギーがバランスよく導入されている(図1)。導入量が最も多いのは小水力発電だが、阿蘇山を擁するだけに地熱の利用も盛んだ。企業や家庭の冷暖房や給湯に使われることが多い。
ただし熊本県には本格的な地熱発電所は存在しない。これは国が環境保護のために国立・国定公園における地熱発電を一部の場所だけに制限したことによる。阿蘇山一帯は規制の対象になっていて、最近まで地熱発電が認められていなかった。ようやく2012年3月に規制が緩和されたことから、今後は地熱発電の開発も進んでいくだろう。
それよりも前に活発になっているのがメガソーラーだ。県が推進する「くまもとソーラープロジェクト」で積極的に誘致を進めてきた結果、沿岸部や山間部で20件を超えるメガソーラーの建設プロジェクトが進んでいる(図2)。
すでに運転を開始した中で最も規模が大きいのは、建材・設備機器メーカー大手のLIXIL(リクシル)が有明工場の敷地内に設置した「LIXIL 有明 SOLAR POWER」である。干潟で有名な有明海に面した36万平方メートルにおよぶ工場の敷地のうち、約3分の1の空き地に2万枚の太陽光パネルを敷き詰めた(図3)。発電能力3.75MW(メガワット)で2011年から稼働しており、年間の発電量は390万kWhを見込む。
さらに規模の大きいメガソーラーの建設も県南部の芦北町(あしきたまち)で始まった。大手ゼネコンの大林組が芦北町の保有する33万平方メートルの牧場の跡地に建設するもので、発電能力は21.5MWに達する(図4)。現在の日本で最大の扇島太陽光発電所の13MWを大きく上回る。
工事は2期に分けて進めることになっていて、第1期は2013年3月末に、第2期は2014年2月末に完了する予定だ。同じ芦北町では別に8MWのメガソーラーも2014年12月に稼働することが決まっている。人口わずか2万人の町で、合計30MWの太陽光発電所が動き出す。
熊本県は今後6つの地域ごとに、それぞれの自然環境を生かした再生可能エネルギーの導入を推進する方針だ(図5)。
メガソーラーや木質バイオマスは各地域で横断的に展開する一方、地熱発電は阿蘇で、洋上風力発電は天草・宇土半島で検討を進める。今後も特定のエネルギーに偏らないバランスのとれた電源構成を持続しながら供給力を高めていく。
*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part I」をダウンロードへ
2014年版(43)熊本:「阿蘇のふもとで地熱と小水力を増やす、メガソーラーに続く電力源に」
2013年版(43)熊本:「メガソーラーが県内47カ所に急拡大、6年も前倒しで目標達成へ」
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