木質バイオマス発電で復興を促進、林業と金融機関が協調する気仙沼市:スマートシティ
宮城県の気仙沼市が地域を挙げて木質バイオマス発電プロジェクトを推進している。林業の従事者が森林の間伐材を燃料として提供する一方、地元の金融機関が発電設備の導入に対して融資を決めた。12月から800kWの規模で発電を開始して、売電収入を地域通貨で流通させる計画だ。
気仙沼市では1年前の2012年4月から、環境省が被災地を対象に再生可能エネルギーの活用を支援する「緑の分権改革」の復興モデル事業に取り組んできた。このプロジェクトでユニークな点は、地域限定で流通する通貨を使ってバイオマス発電用の木材を収集する点にある。
林業では森林に密集する木々を間引いて生育を促す「間伐」が欠かせない。この間伐材を林業の従事者から集めてバイオマス発電に利用する。気仙沼市では間伐材の買取制度を設けて、その対価の半分を地域通貨の「reneria(リネリア)」で支払う仕組みを作った(図1)。地域内だけで使える通貨によって経済を活性化する狙いである。
集められた間伐材を利用して2013年12月からバイオマス発電を開始する。すでに発電事業のために地元の気仙沼信用金庫や三菱商事復興支援財団などが出資して「気仙沼地域エネルギー開発」を設立済み。さらに発電設備を導入するための資金を、仙台市に本店を置く七十七銀行と気仙沼信用金庫が融資することになった。
木質バイオマス発電の場合、間伐材などをチップにしたうえで、ガス化してから発電する必要がある。そのためのガス化プラントを市内に設置する。発電規模は800kWを予定していて、全量を東北電力に売電する予定だ。さらにガスの燃焼時に発生する熱を地元の企業に供給することも計画している。この売電・売熱収入をもとに地域通貨のリネリアを発行する仕組みである(図2)。
木質バイオマスでは未利用の木材を継続的に収集することが最大の課題だ。固定価格買取制度では20年間の買取期間が保証されるため、それを前提に設備を導入して投資の回収を図る。気仙沼市の地域通貨を使った制度が効果を実証できれば、全国の森林地帯で再生可能エネルギーを拡大する有効な策になる。
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