復興に向けて太陽光に力を注ぐ、バイオマスでも強みを発揮:日本列島エネルギー改造計画(4)宮城
岩手・福島とともに震災の被害を大きく受けた宮城県が復興計画のひとつとして「エコタウン構想」を推進している。再生可能エネルギーを活用して新しい社会インフラを構築するもので、復興住宅のすべてに太陽光発電システムを設置するほか、バイオマスの拡大にも取り組む。
実は宮城県は6年前の2006年に、自然エネルギーの導入と省エネルギーを促進する10か年計画を策定して、化石燃料エネルギーの削減に取り組んできた。もともと自然エネルギーの領域ではバイオマス熱の利用が盛んで、2010年3月の時点で秋田に次いで全国2位の規模になっている(図1)。
県内に製紙工場や製材工場が数多くあり、再利用が難しい木材をチップにして燃料にする取り組みが活発に進められてきた。森林整備などによって未利用のまま残されている木材も豊富で、今後さらにバイオマスの熱を利用したシステムや発電設備を拡大できる可能性が広がっている。
2006年に策定した10か年計画では、2015年に向けて自然エネルギーを2倍近くに拡大する目標を設定した(図2)。特に増加量が大きいのはバイオマスだが、それに続いて太陽光によるエネルギーを大幅に増やす。海岸地域を中心に全国的にも日照時間の長い場所が広がっており、太陽光発電の潜在力は十分に大きいと推定されている。
太陽光発電を拡大する方針は震災後の復興計画でいっそう明確になり、メガソーラーの誘致や住宅向け太陽光発電システムの補助金拡充などの施策に反映されている。
この5月には東北電力の仙台太陽光発電所が運転を開始した(図3)。松島湾に面した仙台火力発電所に隣接する場所にあって、発電能力は2MW(メガワット)である。震災による津波の被害で工事の中断を余儀なくされたものの、予定から4か月遅れて稼働にこぎつけた。
電力会社だけではない。石油元売で最大手のJX日鉱日石エネルギーが仙台港にある製油所の敷地内にメガソーラーを建設中で、2013年1月から1MWの発電を開始する計画だ。このほかにも大手企業の連合によるメガソーラーの建設プロジェクトが複数明らかになっている。
宮城県は2011年10月に震災復興計画を発表して、10年後に向けた地域再生の取り組みを開始した。10項目からなる復興テーマのひとつが「再生可能なエネルギーを活用したエコタウンの形成」である(図4)。
その一環で復興住宅すべてに太陽光発電システムを設置する方針を掲げている。加えて燃料電池や蓄電池、電気自動車の導入も進め、地域内で自立できるエネルギー供給体制を備えたエコタウンを県内の各所に展開していく構想だ。10年後の先進的なエネルギー利用環境の実現が待ち遠しいところである。
2013年版(4)宮城:「被災地をエネルギー100%自給都市に、松島から気仙沼まで広がる再生計画」
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