電気事業法の改正案が国会に、2015年度から電力システムを改革:法制度・規制
日本の電力システムを改革するための3本柱の政策が法律になる。「広域系統運用機関」「小売全面自由化」「発送電分離」の実施時期を規定する電気事業法の改正案が4月12日に国会に提出された。法案が通れば、2015年度に第1段階の広域系統運用機関を設立することから改革が始まる。
内閣が4月12日に電気事業法の改正案を国会に提出した。すでに4月2日の閣議で方針を決めており、予定通り3段階の改革を実施する時期を法案に盛り込んだ(図1)。
電気事業法は電力市場のルールを定めたもので、電力会社を中心とする電気事業者に対する規制や義務、発電設備に関する規則などを細かく決めている。その中には電力を供給する事業者の規制も含まれていて、結果として日本の電力市場を閉鎖的で硬直的なものにしていた。
これから3段階で実施する改革案の第1は「広域系統運用機関」の設立である。従来の電気事業法では地域ごとの電力会社が管内の電力需給に責任を負う一方で、地域を超えて全国レベルで需給を調整する仕組みが欠けている。
新たに設立する広域系統運用機関は、全国規模で送配電ネットワークを整備する役割を担うと同時に、電気事業者(図2)に対して需給調整に協力するように指示する権限を与えられる。これによって地域ごとに縦割りになっている電力市場を機能面で開放する。
運用機関の設立と合わせて、電気事業者に対する経済産業大臣の命令権限も強化する。災害などの非常時でなくても電力の供給命令を出せるようになる。さらに電力会社がほかの事業者に対して送配電サービスを拒否した場合に提供を命じることができるようになる。
以上の第1段階の改革は今回の法案が通れば、2015年度をメドに実施することが確定する。今のところ改正案は無事に国会を通過して成立する見通しである。
残り2段階の「小売全面自由化」と「発送電分離」については、電気事業法の附則で「プログラム規定」として実施時期と法案提出時期を加える。小売全面自由化は2014年度の通常国会に、発送電分離は2015年度の通常国会に、それぞれ電気事業法の改正案として提出することになる。
第3段階の発送電分離に関しては自民党内の一部から反対意見が出たようで、今回のプログラム規定では「2015年度の提出を目指す」と表現をやわらげた。この点に関して茂木経済産業大臣は「メドも目指すも意味は変わらない」と述べて、表現の変更が重要な問題にはならないことを強調した。
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