下関沖に60MWの大規模な洋上風力、2年後の着工に向けて環境影響評価へ:自然エネルギー
将来有望な洋上風力発電の建設プロジェクトが着々と進んでいる。前田建設工業は山口県の下関市の沖合に大型の風車15〜20基を設置して、合計60MWに達する日本で最大規模の洋上風力発電所を建設する計画だ。2015年4月の着工に向けて環境影響評価の準備を開始した。
建設予定の海域は本州と九州のあいだで、下関市の沖合0.5〜3キロメートルの範囲になる(図1)。ちょうど対岸の北九州市の沖合では、2MW(メガワット)の大型風車を使った洋上風力発電の実証実験が6月から始まろうとしている。
下関沖のプロジェクトは前田建設工業が進めているもので、現在は国の認可を受けるために必要な環境影響評価の第1段階にある。順調に進めば今後1年半程度で認可を受けて、2015年4月から工事を開始する予定だ。
計画では1基あたりの発電能力が3〜4MWの大型風車15〜20基を洋上に建設する。対象の海域は港から近くて、水深が10〜20メートルと浅いため、発電設備を海底に固定する着床式を採用する方針だ(図2)。風車の中心部は海面から80〜100メートルの高さに達し、ブレード(羽根)の最高到達点は150メートルを超える可能性がある。
陸から最も近い500メートル程度の洋上に1号機を設置して、さらに3列で合計15〜20基を配置する構成だ(図3)。風車のあいだは海底ケーブルでつなぎ、さらに海岸から中国電力の変電所までは地中ケーブルで接続する。海底ケーブルの総延長距離は10キロメートル前後になる。
工事は2期に分けて実施する計画で、予定通りに2015年4月から着工すれば、1年後の2016年4月には第1期の30MWが運転を開始できる見込みだ。続けて第2基の工事を進めて、2017年4月には合計60MWの日本で最大規模の洋上風力発電所が稼働する。総事業費は250億円を想定している。
着工までの最大の課題になる環境影響評価では、特に動植物と漁業に対する影響の範囲がポイントになる。周辺の海域は漁業区域になっていて、すぐ近くにある漁業協同組合の年間の水揚高は1億円を超える。
前田建設工業は環境影響評価の方法書を一般に公開して4月30日まで住民の意見を募った。さらに地元の山口県知事の意見もふまえて第2段階の準備書の作成に進む。最後の第3段階になる評価書の内容を環境省が審査して了承すると、工事の認可手続きに入ることができる。残りの審査などに合計で1年〜1年半はかかるとみられる。
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5年後の2017年から順次運転を開始する予定
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