2020年に標準家庭で月額276円、再生可能エネルギーの賦課金は高くない:法制度・規制
太陽光発電を中心に固定価格買取制度の認定設備が増加していることから、それに伴って電気料金に上乗せされる「賦課金」の上昇を懸念する声が多い。資源エネルギー庁の試算では、2020年に標準家庭で月額276円になる見通しだ。現在7000円程度の電気料金に対して4%以下の上昇率である。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度には、企業や家庭にとってプラスとマイナスの面がある。太陽光などで発電した電力を長期間にわたって高く買い取ってもらえる半面、毎月の電気料金に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が上乗せされる。電力会社の買取金額が増えるほど、賦課金も上昇する仕組みだ。この点を懸念して、再生可能エネルギーの拡大に消極的な意見が出始めている。
そこで資源エネルギー庁が2020年の時点で想定される賦課金を試算した。賦課金の総額は、電力会社などが買い取った金額から、通常の発電設備を使った場合に想定されるコストを引いて計算する。
火力発電を中心とする通常の設備によるコストは、2013年11月の時点で電力1kWhあたり9.55円である。一方で太陽光発電を例にとると、再生可能エネルギーの買取価格は36〜38円と4倍近く高い。こうした差額の総計が賦課金の総額になる。
資源エネルギー庁の試算では、水力を含めて2012年に10%だった再生可能エネルギーの比率を、2020年に13.5%まで高めることを前提にした(図1)。太陽光は約4倍、風力は約2倍の規模に拡大することを見込んでいる。
その結果、賦課金の総額は2020年に約8100億円に達する。電力1kWhあたり1円弱になり、月間の電力使用量が300kWhの標準家庭では月額276円の負担増になる見通しだ。標準家庭の電気料金は地域によって異なるが、現在のところ月額7000円〜7500円程度である。賦課金の比率は料金全体の4%弱にとどまる。2013年に電力会社が実施した値上げ幅の半分以下に過ぎず、さほど懸念する必要のない水準と言える。
否定的な見方が出る背景には、固定価格買取制度で先行したドイツの現状がある。2000年から固定価格買取制度を開始したドイツでは、2011年に電力全体に占める再生可能エネルギーの比率が20%を超える一方、賦課金の負担額も標準家庭で月額1000円を上回った(図2)。さらに2014年には2400円まで上昇することが確定して、社会的な問題としてクローズアップされている。
ドイツの場合は制度を開始した当初から高い買取価格を続けたことが主な要因になっている。その点で日本はドイツから12年も遅れて買取制度を開始したために、太陽光パネルをはじめ発電設備のコストが下がってきた状態で、買取価格も相対的に安い。
資源エネルギー庁が賦課金を試算する際に設定した買取価格は、太陽光が2014年度に34円、2015年度以降は30円まで下がる。太陽光以外は開始当初のままである。太陽光の買取価格は発電設備のコスト低下によって2016年度以降さらに安くなる可能性があり、状況によっては導入量にブレーキがかかりかねない。
しかし再生可能エネルギーの導入比率が2020年に13.5%では低すぎる。家庭の負担が月額276円程度で済むのであれば、買取価格を一定の水準に維持して、導入量を増やしていく考え方もある。太陽光発電の買取価格が30円台にとどまれば、太陽光パネルなどの価格低下によって発電事業者の導入意欲は再び高まることが想定できる。
今後は賦課金と買取価格の適正なバランスをとることが政府の重要な役割になる。現在の試算どおりであれば、賦課金の上昇を懸念して買取価格を急激に引き下げる必要はなさそうだ。
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