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1億枚の実績がある「カドテル」を投入、ファーストソーラーが国内初の大規模太陽光自然エネルギー

ファーストソーラーは太陽電池モジュール生産や、EPC(設計・調達・運営)を最も大規模に実行している企業の1つだ。国内の最初の事例として、自社運営のメガソーラーを立ち上げる。カギはカドテル(CdTe)太陽電池だ。

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図1 北九州市の位置

 2013年11月に日本市場参入を表明したばかりのファーストソーラーが、早くも具体的なメガソーラープロジェクトを開始した。

 建設予定地は、北九州市。ファーストソーラーが事業主となって直流出力1.4MWの発電所を立ち上げる。設計・調達・建設(EPC)のうち、建設段階では大林組と安川電機の協力を得た。完成後の管理・運営(O&M)はファーストソーラーが当たる。2013年11月11日に着工し、2014年第1四半期に運転開始を予定する。


図2 CdTe薄膜太陽電池モジュールを利用したメガソーラーの例。出典:ファーストソーラー

 メガソーラーに採用するのは国内での導入事例がほとんどないCdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池モジュール。国内では「カドテル」と呼ばれることも多い。図2にドイツのバーデンビュルテンベルク州ジンツハイムに建設された出力1.3MWのメガソーラーの例を示す。北九州とほぼ同じ規模の例だ。

 CdTe太陽電池モジュールの量産では同社が群を抜いており、メガソーラー向けの太陽電池として、他の方式の太陽電池と互角以上の競争力がある。既に全世界で1億枚以上のCdTe太陽電池モジュールを導入したという。同社が量産している太陽電池モジュールはほぼ100%がCdTeだ*1)。開発から量産、回収、リサイクルまで、関連事業も全て網羅している。

*1) 住宅向けには面積当たりの出力が高い結晶Si(シリコン)太陽電池を、日本市場から導入していく予定だ。

 ファーストソーラーがCdTe太陽電池モジュールを推進する理由は複数ある。まずは発電に関する基本的な性能が優れることだ。

 CdTe薄膜太陽電池の性能記録は、セル変換効率が18.7%、モジュール変換効率が14.4%という水準にある*2)。高温の条件下(最高気温41度、モジュール表面最高温度67度)においては、結晶Si太陽電池と比較して最大出力が11.3%多く、発電量が9%高まるという。2013年夏季の猛暑を振り返ると、ピーク出力が高い太陽電池の方が役立つだろう。

*2) CdTeが有利なのは物質固有の性質自体が太陽から来る光の分布に最も合っているからだ。CdTeのバンドギャップ値は約1.5eV。太陽光のスペクトルに対してGaAs(ガリウムヒ素)と並んで最適な値となっている。

 次に製造コストが低いことだ。発電層は20分の1mm以下の薄膜。少量の原料を使って短い時間で製品に仕上げることができる。2012年第3四半期時点の製造コストは0.67米ドル/Wを下回っている。

 製造に必要なエネルギーが少ないため、エネルギーペイバックタイム(関連記事)が最も短いと主張する。製造時の環境負荷を考えると、単結晶Si(シリコン)太陽電池などと比較して、優位性がある。

 耐久性や安定性についてはどうだろうか。CdTe太陽電池モジュールは、Cd(カドミウム)とTe(テルル)をほぼ1対1の比率で含む。どちらも人体に有害な元素だ。注意しなければならないのは、一般に元素の毒性と化合物の毒性は異なることだ。CdとTeは化合物として強く結合しており、同社の太陽電池モジュールに封止した状態では、大気中や水中、土壌にCdが漏出することはないという。さらに火災や太陽電池モジュールの破損によっても漏出するCdの量はごくわずかだという*3)

*3) CdTe太陽電池モジュールはIEC 61646、同61730、同61701(塩霧腐食試験)の認証を受けている。海に面する北九州市でも設置には問題がないということだ。

 日本国内ではカドミウムのイメージは良くない。四大公害病と強く結びついた記憶があるからだ。同社は安全性を確保する取り組みに力点を置き、国内でも製造、設置から回収までのモノの流れを可視化する必要がある。

【訂正】 記事の掲載当初、本文第2段落で着工日を「2013年11月25日」としておりましたが、これは「2013年11月11日」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。

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