太陽光発電の先進国ドイツに「自己消費モデル」、日本の蓄電・蓄熱技術を生かす:スマートシティ
再生可能エネルギーの比率が20%を超えたドイツでは、太陽光発電のコストが電力会社の電気料金よりも低くなった。もはや売電するメリットは薄れて、新たに地産地消による「自己消費モデル」の確立が求められている。日本の蓄電・蓄熱技術を生かした実証事業が2015年に始まる。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)がドイツの南西部にあるシュパイアー(Speyer)市で、集合住宅を対象にしたスマートコミュニティの実証事業を計画中だ。日本が先行している蓄電・蓄熱技術を導入して、太陽光発電の電力を最大限に利用する「自己消費モデル」の確立を目指す。
この自己消費モデルには3つの技術を組み合わせる。太陽光発電の電力を充放電するための蓄電池に加えて、外気を活用したヒートポンプによる蓄熱型の温水器、さらに住宅全体のエネルギーを最適にコントロールするHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)で構成する(図1)。いずれの分野でも日本の技術や製品の評価が高い。
NEDOはシュパイアー市や電力公社などと協力して実証事業に取り組む。事前調査を実施した後、2015年9月をめどにシュパイアー市内の集合住宅でシステムの設置工事に入る予定だ(図2)。2016年3月までに運用を開始して、約2年間かけて導入効果を検証する。この事業を実際に運営するのはNTTドコモ、NTTファシリティーズ、野村総合研究所、日立化成、日立情報通信エンジニアリングの5社である。
実証事業で検証するポイントは4つあって、その1つが「逆潮流量の最小化」である。逆潮流は自家発電設備から電力会社の送配電ネットワークに向けて電力が流れる現象で、発電量が消費量を上回った場合に発生する。
こうした逆潮流が増えると、地域内に供給する電力の品質が低下することから、ドイツでも日本でも規制が設けられている。
自家発電した電力の自己消費モデルを実現すれば、電力会社やガス会社から購入するエネルギーコストを抑えることができるうえに、売電する量が減って逆潮流が少なくなる。いずれ日本でも同様の問題が顕在化する可能性は大きく、ドイツの実証事業の成果は日本でも適用できる期待がある。
ドイツでは2000年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度を開始して以降、太陽光発電を中心に導入量が拡大して、現在では国全体の発電量の20%を超える水準に達している。それに伴って太陽光発電のコストが低下して、電力会社の電気料金よりも安くなった結果、余剰電力を売電するメリットが薄れてきている。
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