県営の水力発電所を電力会社へ譲渡、三重県が105億円で10カ所すべて:電力供給サービス
三重県の企業庁は10カ所の水力発電所を中部電力に譲渡する。すでに5カ所の譲渡を完了して、残る5カ所も2015年4月1日付で譲渡する契約を結んだ。譲渡金額は10カ所の合計で105億円にのぼる。電力の小売全面自由化を目前にして、自治体の発電事業も転換期を迎えている。
三重県の企業庁と中部電力は2011年8月の時点で水力発電所の譲渡に合意していた。対象の水力発電所は企業庁が運営する10カ所すべてで、三重県の中部を流れる3つの川の流域に分散している(図1)。中部電力が各発電所に運転監視システムを設置する必要があったため、2013年度から3回に分けて移管を進めることにした。
2015年4月1日付で5つの発電所の譲渡を完了することが確定して、10カ所すべてが中部電力の運営に移行する(図2)。10カ所の発電能力を合計すると9万8000kWで、このうち新たに譲渡する5カ所で3万5200kWになる。5カ所の発電量は2013年度の実績で1億800万kWhに達する。
譲渡金額は10カ所の合計で105億円(税抜き)である。それぞれの発電所の固定資産の帳簿価格(約123億円)から、国庫補助金の相当分(約18億円)を差し引いて算出した。譲渡の対象には水力発電用の2カ所のダムも含まれている(図3)。
三重県の企業庁は1954年に水力発電事業を開始して、10カ所目の水力発電所を1998年に運転開始した。2006年に県議会から民営化の提言があり、中部電力と交渉のうえ全発電所の譲渡を決めた。2015年度からは廃棄物を利用した「三重ごみ固形燃料発電所」だけを企業庁が運営することになる。
全国の自治体では水力を中心に数多くの発電所を運営している。2016年4月に電力の小売全面自由化が始まると、発電事業者の競争も激しくなる。一方で政府は小売全面自由化に伴って自治体と電力会社のあいだの売電契約を見直すように促す方針だ。自治体による発電所の運営方法を見直す機運が高まってきた。
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