石炭層でとれる新型の天然ガス、400万世帯分をオーストラリアから調達:電力供給サービス
電力会社との競争に向けてLNG(液化天然ガス)の調達先を拡大中の東京ガスが、これまでは開発が難しかった「非在来型」の天然ガスをオーストラリアから受け入れ始めた。石炭層の亀裂に存在する天然ガスを採取して液化したもので、年間に120万トンを20年間にわたって輸入する計画だ。
東京ガスのLNG(液化天然ガス)基地で最大の供給能力がある千葉県の「袖ケ浦LNG基地」に、新型の天然ガスが4月2日にオーストラリアから到着した(図1)。
「CBM(コール・ベッド・メタン)」と呼ぶ天然ガスで、石炭層の中にある亀裂の表面に吸着しているものを採取する。オーストラリアでは2000年代に入ってから本格的に開発が始まった。
東京ガスが輸入するCBMは、オーストラリアの北東部にあるクイーンズランド州の「カーティスLNGプロジェクト」で生産する(図2)。東京ガスは2015年から20年間にわたって購入する契約を結んでいる。1年間に120万トンのLNGを調達する契約で、一般家庭の都市ガス使用量に換算して約400万世帯分に相当する。
東京ガスはエネルギーの供給体制を強化する「チャレンジ2020ビジョン」を2011年から推進している。ガスの供給量を2020年までに約1.5倍の規模に拡大しながら、電力と熱を同時に供給できる家庭用のエネファームや企業向けのコージェネレーションを大幅に伸ばす計画だ(図3)。そのためにLNGの調達先を世界の各地域に広げていく。
2017年4月にはガスの小売全面自由化が始まり、首都圏を中心に電力会社と激しい競争を繰り広げることになる。袖ケ浦LNG基地は関東地域の供給インフラのかなめになる重要な拠点である(図4)。このLNG基地は東京電力と共同で運営していて、火力発電用の燃料を供給する設備としても使われている。
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