コンテナ輸送が可能な「地産地消」型水素エネルギー供給システム、川崎市で始動:自然エネルギー(2/2 ページ)
東芝と神奈川県の川崎市は、自立型の水素エネルギー供給システムの実証実験を始動させた。太陽光発電による電力で水素を作り、その水素で電力と温水を供給する仕組みで、環境負荷の少ない新たなエネルギーシステムの実現に役立てていく。
300人に1週間分の電気と温水を供給
今回設置されたH2Oneにおける水素製造量は1時間当たり最大1立方メートルで、水素消費量は1時間当たり最大2.5立方メートル。水素貯蔵量は、270Nm3(ノルマルリューべ)、0.8MPa(メガパスカル)の環境で最大33立方メートルとなっている(図4)。また設置された太陽光発電の発電量は30kWで、燃料電池出力は最大3.5kW、電力貯蔵量は350kWhとなっている。燃料電池の効率は発電55%、温水40%の95%となっており、温水供給量は最大で時間当たり75リットル(40度の湯)だという。これにより、雨などで太陽光発電が全く使えない場合でも、約300人の人に1週間分の電気と温水を届けられるという。
今後は、非常時の災害対策としての活用だけでなく、通常時に水素エネルギ―マネジメントシステムによる予想に基づき、水素の製造量、蓄電量、発電量などを最適に制御し、川崎マリエンのピークシフト、ピークカットに貢献していくという。
2015年度で50台以上の受注
東芝グループでは、水素社会の実現を目指し水素の製造から貯蔵、発電・利用まで一貫したソリューションを提供する方針だ(関連記事)。その中で事業展開として、水素およびエネルギーをその場で作り、その場で消費する「水素地産地消事業」と、水素を遠隔地で作り輸送することでエネルギーの場所と時間のシフトを実現する「水素サプライチェーン事業」を展開する考えを示す。今回のH2Oneは、この地産地消型事業の一環となる。
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